(香港特別行政区)失業率、過去最悪の8.3%

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2003年9月

2003年3月半ばに始まった重症急性呼吸器症候群(SARS)の蔓延の影響が本格的に労働市場に現れ、香港の2003年3-5月期の失業率は初めて8%を突破して、過去最悪の8.3%を記録した。エコノミスト等は、香港が渡航規制地域の解除は受けたものの、SARSの経済に対する影響が長引き、また今後学卒者・中等教育修了者が新規に労働市場に参入することで、失業率はさらに悪化して、夏季には10%に達する可能性があるとしている。

一時下降していた失業率は、2002年11月の7.1%を最後に再び上昇し始めていたが、2003年2-4月期には7.8%(前期比0.3ポイント上昇)を記録して、過去最悪だった2002年7月に並び、小売、ホテル・レストラン、観光部門に特にSARSの影響が現れた。政府によると、3月半ばからのSARSの広がりの影響で、買い物客は店舗に出かけることを避け、ビジネスや観光による訪問客が大幅に減少し、レストラン等で外食する者が激減したために、他の部門にも増してこれらの部門で失業が増大したのであるが、さらに、多くの労働者が無給休暇を取ることを使用者に要求されたことなどで、この時期の不完全雇用率も3.2%となり、前期比で0.3ポイント上昇した。

5月23日に世界保健機関(WHO)は香港に対して渡航規制地域の指定を解除したが、この2-4月期の傾向はその後さらにつづき、3-5月期に失業率は過去最悪の8.3%に達した。失業者数も1万3300人増加して、28万7000人に達した。また、不完全雇用率もさらに0.6ポイント上昇して3.8%、不完全雇用者数は2万2300人増加して、13万5000人に達した。

このような失業の悪化傾向を受けて、政府は6月15日、4月に発表した118億ドルの緊急救済経済措置(本誌2003年7月号参照)に含まれた2万1500人のための職業訓練・暫定雇用創出措置とは別に、今夏卒業する10代の若年者と中年失業者3万2000人のために7億ドルを支出して、職業訓練と暫定雇用を提供することを発表した。緊急救済経済措置の発表後、さらに1万9000人の学卒者と10代の若年者に対する職業訓練・暫定雇用措置が発表されているので、労働市場の悪化に対する短期的救済措置として、政府は7万2000人に対して10億ドル以上を支出することになる。

このような労働市場の悪化に対して、ヴィンセント・クワン・ハンセン銀行主任エコノミストは、失業の上昇を抑制するためにはおよそ3%の経済成長が必要だが、SARS禍で香港の2003年の成長予測は0.8%に止まり、これでは新たな雇用創出は困難で、長期的に見ると、新たな雇用を創出するには経済成長のペースを速めていくしかないとしている。

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