特集4:職業訓練制度
地域圏による職業訓練への取り組み:オート・ノルマンディーの場合

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2003年9月

前述のとおり、16-25歳の若年者を対象とする職業訓練は、地域圏がその主導的役割を担うこととなっている。ここでは、地域圏が独自に運営する職業訓練の事例として、オート・ノルマンディー地域圏のケースを取り上げよう。同地域圏では、若年(求職)者を対象として、2001-2002年に以下の各種職業訓練を実施している。また、若年者を対象とする職業訓練にとどまらず、地域圏は様々な形で職業訓練の発展に取り組んでいる。

(1) 地域圏職業訓練奨励金(FORM+)

目的:
職業訓練・技術研修により職能の向上を目指す就労者・就労経験者の支援
対象:
  • 26歳以上の者で、オート・ノルマンディーに生まれたか、6カ月以上居住している者
  • 5年以上の就労を証明できる者
  • 失業保険手当受給中の求職者で職業訓練コストが2290ユーロを超える者
  • 給与所得者で職業訓練期間中の報酬が通常の75%以下の者(公的財源によって費用を負担される職業訓練を受け報酬を得ている求職者、地域圏職業訓練プログラムによって研修を受けている者、初めての職業訓練を受ける学生は対象外)
奨励金額:
年間763-6102ユーロ。金額は申請者の諸条件(訓練内容、履歴、動機および将来展望など)によって決まる。3年を限度に更新可能。
欧州社会構造基金(FSE)からの交付金を受ける場合がある

(2) 職業経験認定コース(Parcours+)

目的:
職業経験を資格として認定し、それにより再就職を容易にする
対象:
ANPEに登録している求職者で、5年以上同種の仕事に従事し、かつ職業上の認定証の取得を希望する者
内容:
必要に応じて、職能診断(18-24時間)、認定計画への個別サポート(12-14時間)などのプログラムがある

(3) 語学研修小切手帳(Che`quier-Langues)

目的:
外国語能力を高めることで、雇用へのアクセスをより容易にする
対象:
独、英、スペイン語の語学研修を受け、職業上の資格を補充することを望む求職者
研修:
語学研修の必要が認められる者に、研修期間分(60-180時間)の研修費用に相当する小切手帳が渡される
研修終了後、受講者は言語評価センター(Centre d’evaluation linguistique:CEL)で試験を受け、各人の外国語レベルを証明する免状(Diplome de competences en langues: DCL、1995年に教育省が制定)がオート・ノルマンディー地域圏によって発行される
報酬:
求職者としてASSEDICによる失業保険手当が維持される
※なお、1999年に導入された地域圏企業国際発展援助(Aide regionale pour le developpement international des entreprises: ARDIE)を申請する企業は、その従業員あるいは管理職に語学研修を受講させることができる。
費用の負担:
研修費用の大部分、および場合によってはテスト費用の一部も、オート・ノルマンディー地域圏によって負担される。受講者は1時間当たり0.90ユーロを負担する

(4) 情報処理研修小切手帳(Che`quier-Micro)

目的:
求職者の雇用復帰の可能性を高めるため、情報処理に関する知識と経験を付与する
対象:
情報処理に関する知識能力を獲得する、あるいは向上させることにより、職業上の資格を補完することを望む求職者
研修:
情報処理研修の必要が認められる者に、研修期間分(12-90時間)の研修費用に相当する小切手帳が渡される
研修終了後、受講者は情報処理評価センター(Centre d’evaluation informatique: CEI)で試験を受け、その情報処理能力レベルを証明する証明書がオート・ノルマンディー地域圏から発行される
報酬:
求職者としてASSEDICによる失業保険手当が維持される
費用の負担:
研修費用の大部分、および場合によってはテスト費用の一部も、オート・ノルマンディー地域圏によって負担される。受講者は1時間当たり1-1.50ユーロを負担する

(5) 地域圏恒常的教育援助(Aide re´gionale a` l’e´ducation permanente: AREP)

目的:
オート・ノルマンディー地域圏は、個別教育アトリエ(Atelier de pedagogie personnalise: APP)に予算を拠出して、求職者に一般的研修、責任感の育成、職業計画上有用な研修を施す
対象:
ANPEに登録している求職者で地理的移動や財政面で困難な状況にある者
研修:
一般教育あるいは職業教育のための試験・入試の準備。就職あるいは資格取得のための選抜テストの準備
基礎知識の補充・維持
(教育内容は一般領域あるいは基礎的な技術分野に限られる)
研修は1回15時間で、1回の更新が可能
費用の負担:
オート・ノルマンディー地域圏が1時間当たり6.10ユーロを負担する

(6) 研修カウンセリング援助(Aide au conseil en formation)

目的:
企業がその持続的発展のために、研修の必要性についてカウンセリングによって正確な情報を得られるよう支援する
対象:
オート・ノルマンディー地域圏内で操業し、財務状況が健全で、研修制度を自ら管理している企業
研修:
オート・ノルマンディー地域圏がカウンセリング費用の70%まで負担する。ただし、支援額には上限があり、従業員500人未満の企業の場合は2万2867ユーロ、500人以上の企業の場合は5万3357ユーロ

(7) 企業従業員研修計画援助(Aide aux plans et formation des salarie´s d’entreprise)

目的:
技術革新に直面し、大規模な投資や人材育成を余儀なくされる企業への支援
中小企業の社員に対する研修機会の付与。
オート・ノルマンディー地域圏内の人材レベルの向上。
対象:
オート・ノルマンディー地域圏内で操業し、財務状況が健全で、研修制度を自ら管理している企業のうち、以下の条件を満たすもの
  1. 研修期間が2年間であるもの
  2. 研修費用が給与支給総額の3.5%に相当するもの。
  3. サービス産業部門の場合、従業員の5%増加が見込まれるもの。
研修:
オート・ノルマンディー地域圏は、9万1455ユーロを限度に、企業の研修費用を負担する。国やEUの援助が受けられる場合もある

(8) OPCA研修プログラム計画援助(Aide aux programmes de formation des OPCA)

目的:
零細企業の社員の研修を支援して、その人材レベルの向上を図る
研修:
当該企業が加入するOPCA(注1)が研修内容を提案する
研修:
オート・ノルマンディー地域圏は、研修費用の8-10%を負担する。同プログラムには国およびEUの援助が実行されることもある

(9) 職業訓練センター規格向上援助(Aide a` la mise en place d’une de´marche qualite´ dans les centre de formation)

目的:
品質規格を適用する職業訓練センターを支援して、その質の向上を図る
対象:
地域圏継続的職業訓練プログラムに参加する職業訓練機関
費用の負担:
ISO9000とAFNORの規格取得の場合は、外部のサービス企業の介入費用の70%までをオート・ノルマンディー地域圏が負担する
OPDF(職業訓練機関資格専門協会)の資格を取得する場合は、3051ユーロを上限に、支出総額の80%までを地域圏が負担する

(10) 職業訓練センター設備投資援助(Aide a` l’investissement et a` l’equipement des centres de formation)

目的:
職業訓練センターの設備投資を支援して、その近代化を図る
費用の負担:
オート・ノルマンディー地域圏は、設備投資費用の50%までを負担する

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