特集4:職業訓練制度
職業訓練制度と雇用・失業対策の結合

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:雇用・失業問題人材育成・職業能力開発

フランスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2003年9月

(1) 特殊雇用契約

フランスでは、失業者の再就職を支援するために、職業訓練と雇用とを組み合わせた特殊雇用契約が設定されている。これは、特に若年者の(長期)失業を改善するために導入されたもので、職業訓練が強制される契約と任意のものとに大きく分かれる。若年者に限らず、就職が極めて困難な者に対しても適用されることがある。

強制的職業訓練を伴う契約:
見習契約(contrat d’apprentissage)
資格取得契約(contrat de qualification)
雇用適応契約(contrat d’adaptation a l’emploi)
職業指導契約(contrat d’orientation)
任意の職業訓練を伴う契約: 連帯雇用契約(contrat emploi solidarite: CES)
雇用補強契約(contrat emploi consolide: CEC)
雇用主導契約(contrat initiative emploi: CIE)

このほかに、若年者の社会参入をより促進する目的で、1997年に若年者雇用(emplois jeunes)が導入された。

a) 見習契約

目的:
なんらかの職業資格の取得
対象:
16-25歳の若年者で中等教育の第1課程を修了した者。26歳の若年障害者も対象となる
雇用主:
すべての使用者(公共セクターも含む)
契約:
職業訓練と取得目標資格に応じて1-3年。あるいは少なくとも契約の目的となる教育期間以上
職業訓練:
職業訓練は見習い訓練センター(CFA)か(企業の)見習い部門で実施される。年間最低400時間で、取得目標資格による。見習い指導員は一定の要件を満たした品行方正の成人でなければならない

報酬

費用の負担:
一律補償金
社会保険料雇用主負担分減免(従業員10人以下の企業は完全免除、11人以上の企業ではSMICの11%(海外県では20%)まで控除が認められる)
財政:
2000年に企業が拠出した見習税は13億ユーロに上る。そのうち3.9億ユーロが見習い訓練センター(CFA)およびその他の見習い機関に投じられた。CFAは、そのほかに、地域圏から7億5000万ユーロ、適正配分基金から1億500万ユーロの助成金を受けている。2000年に国は14億ユーロを見習い制度に支出している。そのうち7億4300万ユーロが一律補償金に充てられ、7億1900万ユーロが雇用主に対する社会保険料減免分である。このほかに、欧州社会構造基金から9000万ユーロの交付金があり、見習契約に関する2000年の総支出は28億ユーロであった。
利用者の実態:
2000年には新たに24万人が見習契約を締結して職に就いた。そのうちの64%が学校教育を終えた直後に見習契約を開始し、26%はすでになんらかの見習いを経験済みの者である。Vレベルまでの教育を修了した者が契約者の大半(82%)を占め、取得目標資格はCAPあるいはBEPが70%となっている。
利用企業:
見習契約を利用する企業のセクター別割合では、サービス産業が最も多く53.1%を占め、そのうちの約半数は商業である。製造業では、食品関係の職人が全体の半分を占めている。企業の規模別では、従業員10人未満の企業による見習契約の利用が多く、全体の3分の2以上を占めている。

b) 資格取得契約

目的:
以下の職業資格の取得
  1. 職業教育あるいは技術教育修了の学位・免状
  2. 業界労使協約によって認定された資格
  3. 全国雇用労使委員会(CPNE)が作成するリストに含まれる資格
対象(注1):
16-25歳の若年者で資格を持たないか、資格を有していても就職を果たせない者
雇用主:
継続的職業訓練制度への拠出義務を負うすべての使用者(国、地方自治体、継続的職業訓練制度への拠出義務を負わない公共機関、管理人・住宅管理人・使用人・育児補助者の使用者を除く)
契約:
6-24カ月の有期雇用契約(目的が達成されない場合1回だけ更新可能)
職業訓練:
契約期間の最低25%。指導員は最低2年の職業経験がなければならない

報酬

費用の負担:
職業訓練に関しては、1時間当たり9.15ユーロが労使間公認徴収機構(Organisme paritaire collecteur agree: OPCA)によって負担される。また、国はSMICを超えないかぎりにおいて、雇用主の社会保険料負担分を控除する。
利用者の実態:
2000年の新規契約者は13万4000人で、前年から13%増加した。そのうち41.4%は学業修了と同時に資格取得契約を結んだ者で(前年比+6.5%)、高校卒業程度の学歴を有する者の割合も前年から約5%増えて43.8%となっている。
利用企業:
資格取得契約を利用する企業のセクター別割合と企業規模別割合はPDF資料図28のとおりである。

c) 雇用適応契約

目的:
補完研修により雇用あるいはある特定のタイプの雇用への適応を可能にする
対象:
16-25歳の若年者
雇用主:
継続的職業訓練制度への拠出義務を負うすべての使用者(国、地方自治体、継続的職業訓練制度への拠出義務を負わない公共機関、管理人・住宅管理人・使用人・育児補助者の使用者を除く)
契約:
6カ月あるいは12カ月の有期雇用契約(目的が達成されない場合に1回だけ更新可能)。あるいは無期限雇用契約(6-12カ月の適応期間を伴い、その間に職業訓練が実施される)
職業訓練:
200時間(OPCAの定める条件の下で200時間を超えることも可能)
指導員は最低2年の職業経験がなければならない

報酬

費用の負担:
職業訓練に関しては、1時間当たり7.62ユーロがOPCAによって負担される。国による援助はない
利用者の実態:
2000年の新規契約者は6万5000人で、前年から15%増えた。契約者の増加は製造業において特に顕著で(前年比+23%)、この部門は全新規契約者の35%を占めている。一方新規契約者の60%はサービス業部門であり、なかでも商業がその3分の1を占める。

d) 職業指導契約

目的:
雇用へのアクセスがとりわけ難しい若年者に対し職業上の方向づけを行う
対象:
  • 学位を取らずに中等教育の第2課程までを終えた22歳未満の若年者(職業教育・技術教育免状を持たない)
  • 中等教育第2課程修了の学位は有するが、職業教育免状は持たない25歳未満の若年者で、高等教育の第1課程を学位を取得せずに途中で放棄した者
雇用主:
継続的職業訓練制度への拠出義務を負うすべての使用者(国、地方自治体、継続的職業訓練制度への拠出義務を負わない公共機関、管理人・住宅管理人・使用人・育児補助者の使用者を除く)
契約:
  1. 最長9カ月間の有期雇用契約(更新不可)
  2. 最長6カ月間の有期雇用契約(更新不可)
職業訓練:
  1. 契約期間の25%以上
  2. 契約期間の20%以上
職業指導活動には、個別フォロー、職能診断、職業訓練が含まれ、職業訓練の最低75%は企業外の期間で実施されなければならない。指導員は最低2年の職業経験がなければならない

報酬

費用の負担:
職業訓練に関しては、1時間当たり7.62ユーロがOPCAによって負担される。また、国はSMICを超えないかぎりにおいて、雇用主の社会保険料負担分を控除する
利用者の実態:
2000年の新規契約者は7900人で、前年から20%増加した。契約者の75%は、学歴がレベルV(CAP-BEP)あるいはそれ未満である。より詳しく見ると、義務教育修了程度の者が減少したのに対して、レベルVの者が前年から10%増えて全体の35%を占めている。契約の63%はサービス産業であるが、この割合は前年から3ポイント下がった。一方、建設業における職業指導契約の利用が大幅に増え(前年比42%増)、全体の20%を占めている。

e) 連帯雇用契約(CES)

目的:
不足する公共サービスを補うパートタイムの雇用を通じて、雇用へのアクセスが困難な者を就労させてその社会参入を図る
対象:
  • 社会参入がとりわけ困難な18-25歳の若年者
  • 長期の(過去18カ月中に12カ月以上)、あるいは50歳以上の求職者
  • RMI、ASS、片親手当等の受給者
  • そのほか雇用へのアクセスがとりわけ困難な失業者
雇用主:
地方自治体、自治体間団体、公共企業、非営利団体、公共サービス請負法人(国の諸機関は除く)
契約:
3-12カ月の有期雇用契約(24カ月までの延長も可能)。
週20時間のパートタイム勤務
職業訓練:
勤務時間外で任意の職業訓練を受けることができる(職業訓練、適性診断、職能評価、再動員準備、資格取得準備、資格取得など)
報酬:
SMIC以上(CES契約者は、一定の条件を満たせば、他の就労による給与所得も並行して認められる)
費用の負担:
職業訓練の費用は、400時間を限度に、1時間当たり3.35ユーロが国から補償される報酬に関しては、SMICの65-95%が国により負担される。さらに、国はSMICを超えないかぎりにおいて、また週20時間労働を超えないかぎりにおいて、雇用主の社会保険料負担分を控除する(場合によっては失業保険料についても)

f) 雇用補強契約(CEC)

目的:
ある特定カテゴリーの者、とりわけCESを終了してもなお就職できないか、職業訓練を受けられないでいる者の持続的な社会参入を支援する
対象:
  • 社会参入がとりわけ困難な18-25歳の若年者
  • 長期の(過去18カ月中に12カ月以上)、あるいは50歳以上の求職者
  • RMI、ASS、単親・寡婦手当等の受給者
  • 雇用へのアクセスが特に困難な失業者、CES期間を終了した失業者
雇用主:
地方自治体、自治体間団体、公共企業、非営利団体、公共サービス請負法人(国の諸機関は除く)
契約:
  • 12-60カ月の有期雇用契約、または無期限雇用契約
  • 週30時間のパートタイム勤務
職業訓練:
CESにならい、長期の職業訓練が可能になる。CECは、契約者の職業計画の実現を助けるために、職業指導、職業経験認定などを含む
報酬:
SMIC以上
費用の負担
職業訓練の費用は、400時間を限度に、1時間当たり3.35ユーロが国から補償される報酬に関しては、就職が最も困難な者についてはSMICの80%、その他の者については同じく60-20%(漸減制)が国により負担される。さらに、国はSMICの120%を超えないかぎりにおいて、また週30時間労働を超えないかぎりにおいて、雇用主の社会保険料負担分を控除する(場合によっては失業保険料についても)。

g) 雇用主導契約(CIE)

目的:
ある特定カテゴリーの者の職業的社会参入を支援する
対象:
  • 長期失業者
  • RMI、ASS、片親手当等の受給者、障害者
  • 50歳以上で、求職者登録期間が過去18カ月中に12カ月を超える者
  • 脆弱都市地域(zone urbaine sensible: ZUS)(注2)の居住者で、求職者登録機関が過去18カ月中に12カ月を超える者
  • 禁固刑の対象者で、雇用へのアクセスがとりわけ困難な者
  • 例外的に、年齢の割に、その家族的・社会的状況が雇用へのアクセスの大きな障害となっている者
雇用主:
すべての使用者(過去6カ月間に経済的解雇を実施した企業、国、地方自治体とその機関、育児補助者の使用者は除く)
契約:
12-24カ月の有期雇用契約あるいは無期限雇用契約
職業訓練:
勤務先の業務に関係する職業訓練を任意で200-400時間受けられる任意の後見指導(チュートリアル)もある
報酬:
SMIC以上。協定最低賃金(MC)がSMICを上回る場合はMC
費用の負担:
職業訓練の費用は、1時間当たり7.62ユーロが国から補償される。後見指導が行われる場合は、国が535ユーロを負担する。また、OPCAは後見指導費用の230ユーロを負担するが、国による負担とともに二重に受けることは不可。さらに、契約者のタイプによって、国から330-500ユーロの一律補償金が支払われる。

h) 若年者雇用

目的:
地域のニーズに即した持続性のある社会的に有用な事業を創出するとともに若年者の就職を支援する。
対象:
  • 18-25歳の無職の若年者(求職者登録のいかんによらない。またCESあるいはCECの契約中でも可)
  • 26-29歳の若年者で、無職かつ失業保険手当受給要件を満たさない者(CES、CEC、資格取得契約、雇用適応契約、見習契約などの期間によって失業保険手当受給要件を満たす場合を除く)
  • 30歳未満の障害者
雇用主:
地方自治体、公共サービス請負法人(国鉄、郵便局、フランス電力、住宅公団、高速道路会社など)、公立病院、公立学校、非営利団体
契約:
  • 私法上の真正な雇用契約で、原則としてフルタイム勤務
  • 職務の内容は、地域のニーズまたは不足にこたえる社会的に有用な新しいタイプのものでなければならない。分野としては、教育、家族・保健衛生、住宅・都市、環境、文化、スポーツ・余暇、連帯、交通、司法、治安、観光などがある。
職業訓練:
職業訓練、個別フォローともに義務ではないが、雇用主は、場合により地域圏の援助を受けて、職業訓練、職能評価、職業経験認定を提案することができる
報酬:
SMICあるいは各企業の協定最低賃金以上
費用の負担:
国は雇用主に対して、若年者雇用1件当たり年間1万5924.55ユーロ(2002年7月1日現在)を5年間援助する。契約がパートタイム雇用の場合は、勤務時間数に応じて援助金が減額される。5年が経過した後に、当該若年者雇用を通常の雇用に転換して維持しようとする雇用主に対しては、国からさらに援助金を受けることができる
現状と実績:
ジョスパン政権下での若年者雇用対策の中心的役割を果たした施策であるが、2002年春の政権交代により、新たにラファラン内閣では、「若年者契約」と呼ばれる新施策を導入した(注3)。このため、現在では、「若年者雇用」の新規雇い入れは終了しており、契約期間(最大5年)が残存している者がいなくなり次第、施策として終了することとなっている。
本施策により、2001年4月30日時点までで、31万2000人の若年者が雇用され(契約ベース)、27万2000人分の雇用創出(ポスト数)を果たしており、2001年春の段階でジョスパン内閣では、2001年秋には当初目標の35万人に達する見込みであるとされ、2002年には、さらに1万人の新規雇用を地方自治体と各種団体において追加、実現する方針としていた。
なお、2001年春までに本枠組みで雇用された31万2000人の内訳を見ると、各種団体および地方自治体で19万7600人、教育(教育補助員)で8万9550人、警察(治安補助員)で2万3650人、司法(司法補助員)で1200人となっている。現在、この若年者雇用の契約が切れた若者の処遇が問題となっている。

(2) 職業訓練と再就職支援

職業訓練は、雇用の前段階の就職支援においても重要な役割を果たす。ここでは、長期失業者に対する就職支援プログラムである「ニュー・スタート(Nouveau Depart)」と、若年失業者対策である「TRACEプログラム」について、職業訓練の位置づけに留意しつつ概観する。

a) ニュー・スタート

1997年11月のルクセンブルクEUサミットで採択された共通目標に沿って、フランスでは、長期失業を予防し、また長期失業者の再就職支援を強化するための「ニュー・スタート」プログラムが導入された。

ニュー・スタートの対象となるのは、

  • 失業期間6カ月目を迎える16-25歳の若年求職者
  • 失業期間12カ月目を迎える求職者
  • 社会的疎外の危機にある者(若年長期失業者、求職登録期間が2年を超える成人失業者、RMI受給者)

である。ニュー・スタートの対象者は、新しい職業的出発を果たすために、職業訓練、個別サポート等によって再就職の道を模索する。

具体的には、まず、ANPEはすべての対象者に対して、

  1. 受け入れ 
  2. 職能評価 
  3. 職業指導

を実施する。さらに、ニュー・スタート登録から6カ月目の若年者、12カ月目の成人、24カ月を超えた成人を対象に、各人のニーズを探知・分析するための精密面談を行う。

ANPEは、こうして把握された各求職者のニーズに応じて、

  • 就職斡旋(必要があればその前に職業指導と求職支援)
  • 職業訓練(個別活動計画の枠内で)
  • 3カ月ごとに更新される個別フォロー

を提示する。全国成人職業訓練協会(AFPA)による職業経験の評価、職能診断、職業訓練の方向づけなども可能である。

ANPEはこれらの支援活動を追跡・監督し、最初の面談から4カ月後に各求職者の状況をチェックして、実施された求職支援の結果を吟味する。ニュー・スタートによる求職支援期間(最長24カ月)が終了しても再就職できなかった場合には、ANPEは当該求職者とともにその原因を検討し、新規の支援活動を提案する。

(参考)「若年者契約」の概要

対象
措置内容
期間:
無期限
対象者:
16-22歳の若年者
職業資格レベルV(CAP職業適性証書、BEP職業学習修了証書の所持者、およびバカロレア(大学入学資格)を持たない者)もしくはそれ以下の者(無資格者)
この措置は、職業資格のレベルを理由に労働市場参入が最も困難な若者を対象とする
〔職業資格別若年者の失業率:無資格33.1%、第1段階初等免除(リセに進学できない者)24.8%、CAP-BEP16.4%、バカロレア13.5%、バカロレア+2年(短大、専門学校レベル)8.7%〕
対象企業:
全国商工業雇用連合(UNEDIC)に加盟する企業または事業所
採用形態:
フルタイムまたはパートタイムでの無期限雇用契約(CDI)に限る
国の援助:
社会保険料を3年間減免、最初の2年間は100%、3年目は50%の減免
企業での経験の既定承認:
業界別労使により様式を規定する
対象者人数:
年間での利用見込み人数(3年間の措置のため累積していく)

国による援助

  • 国からの援助は、月額225ユーロの一定金額とし、オブリ法、ジュペ法などその他の助成金と重複受給可。225ユーロとは週35時間で労働する月額最低保証賃金の1147.52ユーロの雇用主負担金分である。
  • 賃金の幅によって、援助金額も増えるが、その一覧表はデクレにより規定される。
  • この措置は雇用主負担分の社会保障の軽減措置の全体的見直しを予示する。低賃金労働者に関する負担を少なくし、資格の低い労働者の採用を支援することを優先する。
  • またこの措置は週労働時間35時間の企業と39時間の企業の扱いを平等とすることを尊重したシステムとなっている。
  • 国の費用負担は2003年は1.9億ユーロ、2005年は5億ユーロ。2002年に関しては施行を7月1日とし2500万ユーロの負担見込み。
  • 労働・雇用・職業訓練局がこの措置のフォローを行う。
  • 管理運営はUNEDIC が行う。

措置にかかる手続き

  • 企業の若年者契約については法律によって規定。
  • 若年者契約は企業での若年者採用を鈍化させないために、2002年7月1日より遡及的に適用する。

問題点

本施策は、職業訓練援助とセットとなっていないため、この雇用が職業資格取得にはつながらず、低資格者の資格向上を促進する措置も含まれていない点が批判されている。

b) TRACEプログラム

ニュー・スタートと同時期に導入されたTRACEプログラム(Trajet d’acces a l’emploi:雇用への道のり)は、若年者に対象を絞って、その社会参入を支援し持続的な雇用へと導くことを目的としている。

TRACEプログラムの対象となるのは、雇用から最も遠い若年者で、求人に応募しても労働市場の慣行に照らせば採用の見込みのほとんどない者である。具体的には、

  • 学位や職業資格を得ないままに学業を終えた若年者
  • 一定の学位(CAPあるいはそれ以上)は取得しながらも、その職業的方向づけのため(特に若年女性の場合)、あるいはそのほかの問題解決のために(差別、地理的移動の制限、障害など)、個別サポートを必要とする若年者 が対象となる。

TRACEプログラムは、これらの若年者が自己の現在地を知り、自己の能力を見極め、企業における労働の実態を知り、当面の問題(健康、住居、地理的移動)を解決できるように手助けするものである。TRACEプログラムによって提供される支援サービスには、具体的には、

  • 診断、社会参入支援
  • 職業訓練研修
  • 就労の経験
  • 雇用支援措置へのアクセス
  • 単発的金銭支援
  • 医療および住居へのアクセス

などがある。また、同一の相談員が定期的な面会によって18カ月間若年者をフォローする。この相談員が、担当する若年者の社会参入の道すじを立て、求職活動と職業訓練に関してアドバイスし、また日常的な問題の克服に力を貸す。

最終的には、若年者が無期限雇用契約あるいは最低6カ月の有期雇用契約、見習契約、資格取得契約、雇用適応契約、職業指導契約などによって、持続的な雇用に到達することが目標である。

2002年には、時限措置として、TRACEプログラムに参加する無収入の若年者に対して、支援金が支給されることが決まった。2002年12月31日までにTRACEプログラムに加入すれば、6カ月を期間として(2回更新可、例外として3回)、同プログラムの義務を果たし諸活動に実効的に参加していることを条件に、月300ユーロ(四半期当たり900ユーロ)の支援金を受給することができる。

このほかにも、若年者支援基金(Fonds d’aide aux jeunes: FAJ)による金銭的支援の制度がある。FAJは、18-25歳の若年者が、社会参入上の困難と金銭的支援、さらに場合によっては社会的サポートを必要としている場合に、

  • 緊急金銭支援
  • 社会参入計画と連関するより長期的な金銭支援
  • 個別社会的サポート
  • 住居援助

を実施する。また、TRACEプログラム参加者は、職業訓練研修生と同じ条件で社会保障制度の一般制度に加入できる。TRACEプログラム終了後も、1年の間は、継続して社会保護の対象となる。

TRACEプログラムは、各自治体レベルで実施される。諸地方機関と受け入れ・情報・オリエンテーション常設センター(PAIO)とが、各地域のTRACEプログラムの運営委員会を主宰し、関係者間の調整に当たる。この委員会には、県労働・社会活動局、ANPE、地域圏の自治体代表部、地方の諸団体、経済団体などが参加する。

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