職場での年齢差別が違法に
貿易産業省は7月2日、職場における年齢差別の違法化に向けたコンサルテーションペーパーを発表した。2000年10月に採択された、雇用と職業における均等待遇に関するEU指令により、2006年までに年齢による雇用差別を是正する法律策定が求められているという事情による。今年10月まで幅広く意見を募り、2004年の上程、可決、2006年10月1日の施行を目指している。
内容
今回のコンサルテーションペーパーでは、使用者が70歳以下の退職年齢を定めることを禁止しているほか、適切な理由がない限り、高齢を理由として研修訓練プログラムの対象としないことや年齢差別的な社員募集を行うことなどを禁止している。またコンサルテーションペーパーによれば、法律の発効後は派遣社員なども対象となる。
メリット
パトリシア・フューイット貿易産業大臣によると、40歳代から50歳代の人員削減された何千人もの人々が2度と仕事を得られない状況にあるのは残念なことであるとし、使用者がより広い範囲で労働者の才能と技術を活用できるようにすることは、不可欠なことであるとしている。また、50歳代や60歳代で働きつづけたい人々により多くの選択肢とフレキシビリティーを与えるものになるとしている。年齢差別によって現在イギリスは1年間で16億ポンドの損失を被っているという研究もあるという。このコンサルテーションペーパーの法制化は、イギリスに経済的、社会的利益をもたらすものになるとしている。
年金の危機
イギリスでは、確定給付型の「ファイナルサラリー年金」(企業年金。給付額が最終給与と勤続年数に基づいて決まる。)の見直しが進んでいる。(本誌2003年8月号参照。イギリスの年金制度については、本誌2002年9月号、11月号を参照)。今回のコンサルテーションペーパーの内容について、人々を70歳まで働かせることにより、政府は年金問題の解決の一助にしようとしているとの見方もある。
運輸交通労組のボブ・クロー書記長は、年齢差別を終了するのは大賛成であるが、今回のコンサルテーションペーパーの内容は、職業年金を徐々に衰えさせうるものであるという。Amicusのデレク・シンプソンジョイントゼネラルセクレタリーは、より長期間働くことが答えではない、使用者に年金を守らせるように強制すべきであるとしている。
企業は、労働者の職業生活を延長することによって年金の負担を削減し、計算の基礎を退職年齢70歳として、より早く退職する人は不利な扱いをされることになるだろうとするアナリストもいる。
2003年9月 イギリスの記事一覧
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