韓国労働法:試訳集について

韓国労働法:試訳集について(概要)

  1. この「韓国労働法試訳集」は、韓国の労働事情の収集の一環として、韓国雇用労働省ホームページ(以下「HP」と略す。)に掲載されている法令のうち38本の法律すべてについて、日本語訳を試みたものである(掲載法一覧を参照)。 ただし、法律条文中で特に参照が望まれる施行令等についても、当該条の後に文字の大きさを下げて訳出ししている場合がある。施行令の条文そのものでなく、要旨を期した場合もある。それらを含めて、このような注書きの文章には、冒頭「※」印を付している。
  2. この「試訳集」は、韓国の労働社会に関する基礎情報を把握する取組において、その労働法を参照するために翻訳を試みていく過程で、一部を対象とした翻訳ではどうしても限界があったため、思いきって全部の訳出しを試みることとしたものであり、いわば副産物といえるものである。
  3. また、「試訳集」とあるように、定訳をめざしたものではなく、あくまで韓国の労働事情の収集の際に参照すること、すなわち、韓国ではどんな法律が制定されており、そこにはどんなことが書かれているのかを知ることを目的としたものである。
  4. 試訳は、JILPT特任研究員である浅尾裕が、パソコンの韓・日翻訳ソフトに多くを依存しながら行った。韓国語に精通しているとはいえない者の翻訳であるので、日本語として違和感のある表現となっていたり、誤りが少なくなかったりしているものと思われる。識者のご指摘があれば、歓迎する。
  5. 訳出しに当たっては、直訳ではなく内容がわかることを第一として、いわゆる意訳となっている場合が多い。誤りがあれば、識者のご指摘を重ねて期待したい。また、〔 〕書きで、条文にはないか相違するものであるが、補った方がわかりやすいと思われる語句を追加して示した。
  6. HPに掲載されている条文をみる限りにおいて、次のような「特徴」がみられたが、それぞれ次のように対応した。

(1) 冒頭部分は、例えば次のようになっている。

期間制及び短時間勤労者保護等に関する法律
[施行2013.9.23]
[法律第11667号、2013.3.22,一部改正]
雇用労働部(雇用差別改善課),044-202-7574
HP法令49

冒頭(HPでは、中央にある。)が当該法律の題名であることは容易に理解されるが、次の行の「[施行2013.9.23.]」は、直近の施行日であり、ほとんどは一部改正条項の施行日である。複数の施行日のある法改正が行われた場合には、それぞれの施行日が到来するごとに、ここの日付が改変される。したがって、この日付をみれば、以下の条文はその日現在のものであることが知られる。3行目は、直近の法制定又は改正が行われた法律番号とその公布日である。4行目が主管行政機関(担当課)である。そして、5行目の「HP法令49」は、HPにはないもので試訳者が加えたものであるが、HPの法令サイトに掲載されている番号である。雇用労働部の法令サイト(韓国語)新しいウィンドウ

(2) 条文には、改正経過が添えられている。例えば、次のとおりである。

(定義)
第2条  この法律で使用する用語の定義は、次のとおりである。
(改正2007.4.11,2013.3.22)

1.「期間制勤労者」とは、期間の定めのある勤労契約(以下「期間制勤労契約」という。)を締結した勤労者をいう。

2.「短時間勤労者」とは、「勤労基準法」第2条の短時間勤労者をいう。

3.「差別的処遇」とは、次のそれぞれの事項において合理的な理由なく不利益に処遇することをいう。

カ. 「勤労基準法」第2条第1項第5号による賃金
ナ. 定期賞与金、名節賞与金等定期的に支給される賞与金
ダ. 経営成果による成果金
ラ. その他の勤労条件及び福利厚生等に関する事項

ここで、柱書きの後に添えられている「(改正2007.4.11,2013.3.22)」が改正経過であり、直近の改正は2013年3月22日公布法により行われたことが示されている。なお、この添え書きが行をまたぐ位置にある場合は、行換えをしている。

(3) 条文は、原則として、章−節−条−項−号−モクで編制されている。条に複数の項がある場合は、原文では①、②、③・・・・で段落書きされているが、文字変換上の問題がある場合もあるので、ここでは(1)、(2)、(3)・・・で示している。号は1.、2.、3.・・・と列記した。号にさらに列記がある場合に使用されているのが「モク」であり、ハングルの子音配列であるカ、ナ、ダ、ラ・・・の順に列記される。日本でのイロハ・・・に当たるといえる。ただし、日本ではイロハ・・・の総称は条文では使用されないので、可能な限り「モク」という表記は使用しないように努めた。なお、日本法で節の下の章立てである「款」、「目」に当たるものは、今回の試訳の範囲では見出されなかった。

(4) HPでは、改正法は公布されているものの施行日が到来していない条文が、現行の条文の後に背景色を変えて並列されている。条文の後には、施行日が表記されている。この場合、試訳では、施行前の改正後の条文の条番号及び見だしの部分を赤字で表記して、同様に並列しておいた。ただし、この試訳集が整理された後に、既に施行日が到来したものもあることには、留意されたい。

(5) 日本の条文では「前条」や「次条」などと書かれるところも、韓国法では一般に「第○条」というように番号で書かれる。(古い法律では、「前条」などとされている場合もみられた。)これについては、韓国式の方が便利な面もあるが、この試訳では、日本式の記述方法を基本とした。(整理しきれていない残りがあれば、ご容赦いただきたい。)

(6) 韓国法では条文中「・」(ナカグロ)が多用されている。日本法では、条文文章中で使用されることはあまりないが、これを日本式の読点に整理するのは煩瑣であり、また、内容が誤解される恐れも小さいので、原則として、そのままとした。

(7) 条文では「第○条に基づき」、「第○条による」などの表現が頻出し、微妙な違いがあることが多い。韓国法ではそれらが同じ語句で表現されていることが多い。この試訳では、いちいち表現を使い分ける煩瑣を避け、日本語表記としてやや違和感がある場合もあるが、原則として「第○条による」など「よる」を用いている。

(8) 韓国法は、当然ながらハングルで表記されているが、ときとして、同音異義語の誤解を避けるため、( )書きで漢字が添えられていることが希にある。その場合は、日本語表記としてやや違和感がある場合もあるが、原則としてその漢字語をこの試訳でも用いた。

(9) 数字は、原則として算用数字の小文字を用いた。ただし、漢数字を用いたとこともある。また、期間を示す「○月」、「○ヶ月」などは「○カ月」に統一した。

(10) なお、付則(附則)は、主なものを掲げたが、その中でも一部省略している。

  1. 今後、韓国の労働社会に関する基礎情報を把握する取組が継続されている間は、定期的にこの試訳集も更新していく予定である。

2015年6月

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韓国労働法:試訳集の改訂について(2019年2月時点)

  1. 「韓国労働法試訳集」について、2019年(平成31年)2月時点における韓国雇用労働部(省に相当)ホームページ(以下「韓国HP」といいます。)の掲載法令により改訂しました。前回の改訂は、2018年5月時点によるものでした。なお、この試訳集そのものの性格等については、「韓国労働法試訳集について」を参照してください。
  2. 改訂に当たっては、原則として前回掲載分から変更になった部分を朱書きにしました。ただし、この方法では、削除された部分は明示できていませんので留意してください。
  3. 前回の改訂の際と同様、「改正法は公布されているものの施行日が到来していない条文」については、韓国HPの表示方法にならい、条文の背景に影を付しています。したがって、条の新設の場合のほかは、新旧の条文が併載されています。ただし、軽微な改正の場合は、当該条の直後に赤字で※印での注書きにとどめたものもあります。なお、今回の改訂版を整理した後に、既に施行日が到来したものもあることには、留意してください。
  4. 参考までに、この間における法改正のうち主要な事項を別表にまとめてみました。
    <別表>前回改定(2018年5月時点)から今回改訂までの間の主な法改正事項(参考)(PDF:133KB)
  5. 誤りがあれば、識者のご指摘をお待ちしております。

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掲載法一覧

※( )内の番号は、韓国雇用労働省ホームページ法令欄掲載番号。

※ジャンル別区分は、試訳者による。

  1. 労使関係
    • (1) 労働組合及び労働関係調整法(労働組合法)(52)
    • (2) 公務員の労働組合設立及び運営等に関する法律(55)
    • (3) 教員の労働組合設立及び運営等に関する法律(教員労組法)(58)
    • (4) 勤労者参加及び協力増進に関する法律(勤労者参加法)(61)
    • (5) 労働委員会法(70)
    • (6) 経済社会発展労使政府委員会法(73)
    • (7) 労使関係発展支援に関する法律(112)
  2. 労働基準、労働条件
    • (1) 勤労基準法(29)
    • (2) 最低賃金法(34)
    • (3) 賃金債権保障法(40)
    • (4) 勤労者退職給与保障法(退職給与法)(46)
  3. 産業安全
    • (1) 産業安全保健法(85)
    • (2) じん肺の予防及びじん肺勤労者の保護等に関する法律(90)
    • (3) 韓国産業安全保健公団法(93)
  4. 雇用政策、労働市場
    • (1) 雇用政策基本法(1)
    • (2) 職業安定法(4)
    • (3) 建設勤労者の雇用改善等に関する法律(7)
    • (4) 障害者雇用促進及び職業リハビリ(再活)法(障害者雇用法)(98)
    • (5) 青年雇用促進特別法(青年雇用法)(104)
    • (6) 外国人勤労者の雇用等に関する法律(106)
    • (7) 採用手続きの公定化(公正化)に関する法律(採用手続法)(117)
  5. 能力開発
    • (1) 勤労者職業能力開発法(10)
    • (2) 職業教育訓練促進法(職業教育訓練法)(13)
    • (3) 国家技術資格法(15)
    • (4) 熟練技術奨励法(18)
    • (5) 資格基本法(21)
    • (6) 韓国産業人材公団法(24)
  6. 差別禁止、ワーク・ライフ・バランス
    • (1) 派遣勤労者保護等に関する法律(43)
    • (2) 期間制及び短時間勤労者保護等に関する法律(期間制法)(49)
    • (3) 男女雇用平等及び仕事・家庭両立支援に関する法律(男女雇用平等法)(95)
    • (4) 雇用における年齢差別禁止及び高齢者雇用促進に関する法律(高齢者雇用法)(101)
    • (5) 経歴断絶(中断)女性等の経済活動促進法(114)
  7. 雇用福祉
    • (1) 社会的企業育成法(26)
    • (2) 勤労福祉基本法(64)
  8. 労働保険
    • (1) 公認労務士法(37)
    • (2) 産業災害補償保険法(76)
    • (3) 雇用保険法(79)
    • (4) 雇用保険及び産業災害補償保険の保険料徴収等に関する法律(雇用産災保険料徴収法)(82)

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※内容を著作物に引用(転載)する場合は,必ず出典の明記をお願いします。

例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:韓国」

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