開催報告:第32回労働政策フォーラム
グローバル化と労働組合の「いま」
—主要国の経験と対応—
(2008年5月13日)

G8労働大臣会合が5月11日~13日に新潟市で開催され、労働組合はこれに合わせて、サミット議長国の首相に対して労働組合声明を申し入れる会議(レーバーサミット)を開催した。当機構は連合と協力のうえ、この機会に来日したグローバルユニオン(国際労働組織)や主要国労組のトップ・リーダーを招き、5月13日、東京港区の「女性と仕事の未来館」で労働政策フォーラム『グローバル化と労働組合の「いま」―主要国の経験と対応―』を開催した。「グローバル化が労働者に与えた負の影響」と「その対応」という2つの主題について発言した各国労組リーダーの発言を基に、フォーラムの模様を報告する。

Ⅰ 基調報告「グローバル化が世界の労働者に及ぼす影響」

国際労働組合総連合(ITUC)書記長:
ガイ・ライダー氏

Ⅱ 各国報告「グローバル化がもたらす各国労働者への影響と取組」

【日本】 連合会長:
髙木 剛氏
【フランス】 フランス民主労働同盟(CFDT)全国書記:
アヌーシェ・カルヴァール氏
【ドイツ】 ドイツ労働総同盟(DGB)副会長:
イングリッド・ゼアブロック氏
【イギリス】 イギリス労働組合会議(TUC)書記長:
ブレンダン・バーバー氏
【イタリア】 イタリア労働総同盟(CGIL)経済社会研究所(IRES)所長:
アゴスティーノ・メガレ氏
【ロシア】 ロシア独立労働組合連盟(FNPR)会長:
ミハイル・シュマコフ氏
【アメリカ】 アメリカ労働総同盟産別会議(AFL‐CIO)会長,OECD-TUAC会長:
ジョン・スウィーニー氏

Ⅲ クロージングコメント「公正なグローバル化へ向けて」

経済協力開発機構労働組合諮問委員会(OECD-TUAC)事務局長:
ジョン・エバンス氏

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Ⅰ 基調報告「グローバル化が世界の労働者に及ぼす影響」

ガイ・ライダー氏/国際労働組合総連合(ITUC)書記長

労働世界の変容

過去 20年の間にグローバル化のペースが加速してきた。これに伴い劇的かつ急速な労働世界の変化が見られる。これは前例のない範囲、スピードで進んできた。あらゆる変化のプロセスがそうであるように、勝者と敗者が生まれている。もちろん、だれが勝者で、だれが敗者であるのかを普遍化して言うことには危険がある。しかしながら一般的には、グローバル化は、権力あるいは影響力のバランスを労働者から資本へと移行させたと言えるのではないか。資本によって、雇用あるいは生産拠点が1つの地域から別の地域へと移転させられてしまう。国民所得に占める賃金の比率は、先進国、途上国を問わず下がっている一方で、企業収益は上がっている。同時に、労働者の現状はますます厳しくなっている。労働の不安定性は非常に危険なレベルになっているのだ。

非正規雇用は国際的な課題

今回、新潟の労働組合の方々とお会いする機会があった。これは非常に重要かつ価値ある経験だった。若年労働者、女性労働者、また増え続けている日本の非正規雇用労働者の方々とお話しする機会があった。日本の労働者における非正規雇用者率は約3分の1に達すると聞いている。彼らは今非常に厳しい状況に直面しているようだ。そして重要なことは、連合がそれに対応しようとしていることだ。諸外国から見て、日本は一般的にはグローバル化の勝者と見られているのではないか。しかし実際には数百万という人たちが非常に厳しい状況に置かれている。国内的にも国際的にも労働組合運動はこれに対処していかなければならない。

グローバル化の負の側面

もう1つ懸念すべきことがある。グローバル化のモデルの問題である。このモデルは非常に不公平な側面を持つが、同時に脆弱なものでもある。持続可能なグローバル化に向かっているとは言えないのが現状だ。一般的には、持続可能な発展には3つの柱があると言われる。「経済」、「社会」、そして「環境的持続可能性」だ。

現状はどうだろうか。グローバルな金融危機によって信用が収縮した。これによって経済的な持続可能性に疑問符が投げかけられた。さらにまた、食料危機は非常に大きなインパクトをもたらしている。IMF(国際通貨基金)によると、世界中で何億人もの人々が飢餓の危機にさらされている。世界全体として食料の安全保障を考えていかなければならない。 10億人の労働者が1日1ドル未満で生活しているという現実を考えてみて欲しい。彼らにとって今年だけで食料費が 30%上がっているのだ。もちろん、地球温暖化、気候変動という問題もある。こうした外的要因を考えても、グローバル化の持続可能性は非常に脆弱なものであることがわかる。つまり、労働組合としては、できることに対し、決意を持って素早く行動をとらなければならないということだ。これが持続可能な社会の実現につながる。

労働組合は何をすべきか

ではこういった深刻な課題に対し、私たちはどういった行動をとればいいのだろうか。先ほど言及したように、今世界中で、非常に大きな変化が起こっている。そういった中で、私たちも変わらなければならない。伝統的な目標、あるいは伝統的な価値観を捨て去れということではない。しかし、労働組合も変化していかなければ課題に対処することはできないと考えている。

今回の訪日で改めて、連合が非正規労働者の組織化に取り組んでいることに対して感銘を受けた。これは連合の将来にとっても、それから世界中の労働組合にとっても非常に重要なテーマだ。グローバル化が進むということは、労働組合も国際的な活動を改善しなければならないことを意味している。労働組合はかつて、資本への対応は国内の対処だけで済んでいた。しかしそれはすでに過去の話。今は国際戦略が必要な時代だ。国際会議での決議という形だけではなく、日常の労働組合の活動に国際戦略を組み込んでいかなければならない。国内、そして国際的な労働組合の活動を融合していかなければならないのだ。グローバル化とはそういうものであり、企業は20年間そういったことをやってきたわけで、私たちも実行していかなければならない。

持続可能な社会を目指して

このような課題に対処することを目的に、ITUCは 2006年 11月に設立された。ITUCは史上最大の労働組合の団体となったわけだが、この団体を成功させるためには、労働組合の国際化をさらに進めていかなければならない。つまり、グローバル化された経済の中で、労働者が抱える大きな課題に対処していかなければならないということだ。世界中の加盟組織、つまり 150カ国以上の仲間がいるわけだが、その全員がインターナショナリズムにコミットしなければならない。連合がこうした課題に果敢に取り組んでいること、そして世界中の労働組合がそれぞれの課題に取り組んでいることをうれしく思う。

例えば新潟の非正規労働者たちには、その地方特有の問題がある。地方での行動と、国レベルでの行動の両方が必要なわけだが、成功するためには国際的な文脈の中でその活動を融合させていくことが必要だ。そして初めて、その行動が公正かつ持続可能なものとなるのだ。

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Ⅱ 各国報告「グローバル化がもたらす各国労働者への影響と取組」

【日本】 髙木剛氏/連合会長

レーバーサミットとは

レーバーサミットは、G8サミットに対して、労働組合の主張を反映させることを目的に毎年開催いたしている。G8諸国の労組代表や、ITUC(国際労働組合総連合)、OECD-TUAC(経済協力開発機構労働組合諮問委員会)の代表が、毎年サミット議長に対して、その年のサミットに労働組合として取り上げてほしいテーマに関する要望を行う。

レーバーサミットは 30年前の 1977年に始まり、毎年継続的に行われてきた。日本でレーバーサミットが開催されるのは今回で5回目。今年のサミットは、7月7~9日、北海道洞爺湖畔で開催される。そのサミットに向けてセクション別に閣僚会議等が持たれるわけだが、3日間にわたり新潟でG8の労働大臣会合が開催された。この労働大臣会合に合わせて、毎年のサミットの議長を務める各国の首脳と労働組合の代表が意見交換する場を持たれることが慣例化している。今年も労働大臣会合の終了後( 13日 17時)、首相官邸でこの壇上に並ぶメンバーと福田総理との間で、約 90分にわたりいろいろな協議を行う。福田総理には、労組声明、あるいは、声明以降起こっているいろいろな変化も若干織り込んで協議する予定であるが、本日のフォーラムの議論の内容についても、洞爺湖の議論につながれば良いと考えている。

非正規雇用の現状

グローバル化が日本の労働者に及ぼしている負の側面について、日本の状況を簡単に報告したい。今、日本では、格差拡大、ワーキングプアという言葉が躍っている。その背景には、非常に急速に進んだ規制緩和があり、例えば、労働者派遣法が2度にわたり大幅に改正された。 99年には、それまで派遣対象業種が 26業種に限定されていたものが、製造業務などを除き原則自由化され、また 2004年には製造業務への派遣も解禁された。一連の規制緩和の背景には、経済のグローバル化の進展が色濃くあったと思う。日本企業の国際競争力を維持するという大義名分で、労働分野についても大幅な規制緩和を求める強い経営側の意思、あるいはそれに迎合した政府の対応という背景があったように思う。他方、こうした規制緩和と相まって、この 10年で企業経営者のマインドも大きく変わってきた。3つの過剰と言われるヒト、モノ、カネ。モノは設備とも換言できる。各企業は、この3つの過剰を抱える中で、企業経営を改革するために急速な勢いでヒトの問題に手をつけた。各企業が正社員を減らし、パートタイマーや契約社員、派遣・請負労働者といった多種多様な非正規社員を増やしてきた。非正規労働者は現在では 1,740万人を超え、日本の雇用労働者全体の3分の1以上を占めるに至っている。こうした一連の非正規雇用は不安定であり、保護という側面で見たら非常に脆弱な状況を抱えていると言わざるを得ない。収入面でも平均賃金は正社員の 50~ 60%でしかないという実態にある。年収が 200万円に届かない労働者数が 1,000万人を超えているという状況も伝えられている。また、希望しても正規雇用として働けない若年労働者が急増している。「そういう働き方(非正規雇用)で働きたいという人がたくさんいるからこういう事態になっているのだ」という主張が一昨日新潟でもあり、この点について、経営側と私との間で議論があった。そのことが昨日の新聞報道にもあったわけだが、多少インテンショナルな書きぶりではあったが事実としては正しいと思う。

最近の日雇い派遣の問題等については、その不当性について多くの方々の関心が高まっており、現在、法改正に向けてのいろいろな議論も進んでいると承知している。こうした非正規労働者の問題は、労働者が獲得していくべき知識とか技能の問題、あるいは少子化の問題等とも絡むとも言われており、日本社会全体が劣化しているのではないかという懸念とも結びついている話だと思う。

正規社員は長時間労働

一方、正規雇用については、この 10年間で大幅にその数が減少しており、また、ある時期までは正規雇用の採用が大幅に抑制されてきた。こうした状況の中で、正規労働者の労働時間は延びている。過労が原因で精神的な病を発症する労働者も増加している。また、企業が残業手当の支払いを抑えたいという理由で、実態上は管理職ではない労働者を労働時間規制の対象外という位置づけである管理職に見せかけるといった問題――日本では「名ばかり管理職」と呼ばれるが――も数多く指摘され始めている。

こうした中で、グローバル化はどんどん進んでいる。投資ファンド等による企業買収に伴う雇用問題も発生している。戦後の日本では、独占禁止法によって純粋持株会社を禁止してきたが、この純粋持株会社の禁止も 1998年、ちょうど 10年前に解禁された。また、99年には株主交換制度等がつくられ、自社が所有している株券と相手が持っている株券を交換することによって、現金を動かさなくても会社を所有できる仕組みが導入された。さらに 2005年には会社法が改正され、2007年からはいわゆる3角合併も解禁されている。これにより今後ますます企業買収が加速化し、企業買収に伴う労働条件の悪化、雇用問題が発生するという危機感を持っている労使も多い。

非正規労働センターの設置

こうした中で連合は、昨年 10月の第9回連合大会において、「非正規雇用問題は、今まさに社会的な問題としてアプローチする必要性が非常に強くなっており、この問題を連合の労働運動の対象としてその中心的な柱に据えて取り組む」という決定をし、大会直後に「非正規労働センター」を立ち上げ、現在その活動の緒についたところである。日本全体で格差の問題がいろいろ噴出してきているわけだが、「ストップ・ザ・格差社会」のキャンペーン等とあわせて、この非正規問題の課題に対処して行こうと考えている。

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【フランス】 アヌーシェ・カルヴァール氏/フランス民主労働同盟(CFDT)全国書記

グローバル化の影響は両面

グローバル化の負の側面が労働に対してどういう影響を与えているかを話す前に、2つのことを指摘しておきたい。まず、労働市場における変化の中でグローバリゼーションの影響を特定するのは非常に難しいということ。これにはしっかりとした分析ツールを持つことが必要だ。グローバリゼーションがどのように経済に影響を与え、また労働権にどういう影響を与えているのかを客観的におさえることが必要だと考えている。

もう1つは、グローバリゼーションの影響というのはマイナス面だけではないという点。マクロ経済で見た場合、フランスはむしろグローバリゼーションのプラスの影響を受けている国の1つ。例えば、フランスに対する直接外国投資は 1,070億ユーロに上っており、マイナスの影響だけを論じるのはおかしい。保護主義的あるいは閉じこもりの傾向を助長するという意味において狭小的な考え方を広めるという恐れもあるからだ。労働組合は、この両方のバランスを勘案して最も適した答えを見出していかなければならない。

負の側面

労働者に対するグローバリゼーションの負の影響は事実非常に多い。まず、不平等なグローバリゼーションの富の分配がなされているという点。フランスは現在購買力が低下している。賃金が一定期間横ばいを続けていること、そしてそれに追い撃ちをかける物価上昇などが要因となっている。基本的な食品高、原油高などの影響も大きい。これらのことは、貧しい層により大きな打撃を与えている。

それから、労働の格差の問題。低賃金の労働力が戦略的な競争力になっていることに起因する問題である。製造業については特にそうした傾向が強い。フランスでは、製造業での雇用が解雇に遭いやすい。職業教育などの職業転換を図るための教育が確立できていないなど、セーフティネットはほとんど機能していない。教育を受けていない単純労働者のレベルの人たちが特に影響を受けやすい。今、フランスで労働を創出することは難しい。投資家は非常に短期間の投資しか見ていない。経営者と株主の利益を追求するのみである。しかし、株主は従業員でないことから、従業員は置き去りにされている。

もう1つ、日本と同じ状況だが、不安定な雇用が増えていること。短期契約労働者が増えており、パートタイム労働の契約を強いられている。また、数年前からあるのは、ワーキングプアの増加という問題。働いていても最低限の生活をすることができない人たちの存在が問題となっている。これについて私たちは、労働組合の戦略として、持続可能な労働をディーセントワークの枠内で行うべきだ、それを獲得すべきだということを主張してきた。

労組の3つの取組

労組の具体的対応について3つの取組を申し上げたい。まず、社会的対話を増やしていくこと、第二に国の政策に対する提言を行っていくこと、そして第三にグローバルガバナンスを考えていくことの必要性である。

フランスはEUの加盟国だ。労組の活動は、基本的には国内で行われているが、ヨーロッパレベルでも活動を行い多くのことを実現できると思っている。ヨーロッパレベルの労組組織は、賃金労働者のための規則、権利を守るような統一労働市場をつくり上げていくことを目標としている。G8の中で私たちは、労働者の権利が十分ない国で権利を確立することを求めている。今、新たな労組のモデルが必要となってきている。特に、経済の新興分野において新しいモデルが必要だと思う。新たな不安定な労働者、若者、女性、不法労働者などの存在が顕在化しており、その人たちのニーズに応えるような労組モデルが必要となっている。不法労働者は、不法に滞在しているわけだが、賃金を得、他方で労組費用も払っている。不法に滞在しているためにまったく権利を享受していない人たちのことも組合は考慮しなければならない。

国際労働組織の活動を通して、特に新興国の労働市場を適正に構成することを提言していかなければならない。例えば、中国、アフリカ、ラテンアメリカやインドなどで、農業危機のために農業従事者が一般の労働市場にどんどん参入している。しかし、彼らはほとんど資格を持っていないために単純労働しかできない。したがって常に低い賃金しか払ってもらえないという事実がある。これら労働者を市場に適正に融合させていく政策が必要となっている。

最後に、国際的な労働運動がグローバルガバナンスに影響を与えていくことが重要だという点を指摘したい。ガイ・ライダー書記長が持続的発展について言及されたが、G8の国々は経済発展を少し緩和させるようなメッセージを出すことも必要ではないかと思う。そのためには、私たちはいろいろな経験、知見を分かち合うことが必要だろう。

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【ドイツ】 イングリッド・ゼアブロック氏/ドイツ労働総同盟(DGB)副会長

グローバル化の敗者ではないが

ドイツは、グローバル化の敗者には含まれていない。輸出産業については、世界各国にその輸出量を増加させている。長年にわたって低成長だったわけだが、ここにきて成長率は再び伸び、そしてまた雇用が新たに創出されている。われわれはまた再び技術革新力を得た。そして競争力を得ることになった。将来に夢が持てるようになったと言える。つまりドイツにおいては、グローバル化の負の影響をはっきりと感じるところまでいっていない。しかし、もちろんマイナスの面もある。輸出ブームがあるにもかかわらず、国内の消費は伸びていないということがその1つだ。その理由は購買力が不十分だということ。数年間賃金が向上してこなかったということが背景にある。実質賃金が伸びず、よって購買力も不十分で、国内消費は停滞を続けている。

低賃金、構造的失業問題

さらに深刻なのは構造的な失業問題である。非熟練労働者、若者、中高年労働者、女性、あるいは移民といった人たちが構造的な失業問題に直面している。労働市場へ参入することができないでいるのだ。ドイツにおいてもやはり、企業閉鎖、あるいは海外移転といった傾向がある。利益を上げていても事業が閉鎖される、あるいは低賃金国に移転するといった現象。こうしたことに伴い数千人の雇用が失われてしまうという事実がある。私たちは中国の企業と賃金の水準で戦うつもりはない。私たちのメリットは、やはりスキルが高い労働者がいるということ、そして、技術的、革新的な力があるということだろう。しかしながら、現実には企業が閉鎖されてしまう、あるいは移転してしまうという事態が起こっており、特に中流階級の人たちに不安定な気持ちが強くなるなど大きな影響が出ている。

背景に富の分配がうまく行われていないという問題がある。貧富の差が拡大しており、金持ちがどんどん金持ちになっていくその一方で、低賃金であえいでいる人たちも増えているという状況があり、このような状況がさらに深刻化するのではないかという懸念がある。低賃金問題は、ここ数年間社会的な問題となっている。従ってわれわれ労働組合は、最低賃金の導入を主張している。他のヨーロッパの国では、法定最低賃金が導入されている例が多いが、ドイツでは導入されていない。われわれは現在最低賃金制度導入のキャンペーンを行っている。このキャンペーンをさらに強化していきたい。そうすることによって、社会的な地位を失い、そして何の保障も得られない労働者を救っていきたいと考えている。

他の先進国においても見られる、非正規雇用が増加しているという問題もある。パートタイマー、派遣といった問題に加え、ドイツには、月額賃金 400ユーロ以下のミニジョブというものがある。こういった非正規雇用がどんどん拡大しているという状況がある。多くの企業は正社員を雇うかわりに非正規労働者を雇う。つまり、低賃金の人たちは、さまざまな職に就かなければならないということを余儀なくされている。

高齢化、金融、職業教育問題

もう1つ、私たちが今連邦議会で議論していることに、年金問題がある。年金受給年齢が引き上げられ 67歳となった。これは大きな問題であると考えている。 67歳まで働かなければいけないわけだ。日本でも同じ問題があると聞いた。中高年の労働者をどうしていくのか、労働者は何年ぐらい働かなければいけないのか、つまり、年金受給年齢を何歳にすべきなのか、そして高まっていく中高年の失業問題をどうしていくのかという問題がある。減少していく労働力を今後どう確保していったらよいのかという問題も他方にはあり、労働組合としては、この問題を複合的に解決していかなければならない。

また、ドイツにおいても、ヘッジファンドあるいはプライベートエクイティファンドなどの問題がある。ハゲタカたちが、ドイツ企業を買収するなどの投機的な行動をとっている。彼らはただ目先の利益だけを考えており、この影響で多くの雇用が失われている。今、こうしたヘッジファンドに対して慎重になろう、そしてまた透明性を高めていこうという議論がなされている。

さらにドイツには、職業訓練を学校で行い、そしてまた企業でも行うというデュアルシステムという制度がある。この制度には、その企業において実習するという、つまり職業訓練ポストというものがあるわけだが、その職業訓練ポストが残念ながら十分に提供されていない。つまり若い人たちの職業訓練が十分に実施されていないという問題がある。

世界の労働者にディーセントワークを

グローバル化というのは、労働組合の組織率を低下させていくという影響を持っている。この数年間、我々の組織率も下がってきた。しかし、われわれは労働協約において成功を手にすることで、国民からの労働組合に対する認識を改善している。今後は低賃金の人々、そして非正規の人々も労働組合の中に組み入れていきたいと考えている。

ドイツにおける問題はこのようにさまざまであるが、最後に、われわれは上質な労働を普及させようという努力をしているという点を強調したい。私どもが主張しているディーセントワークは、去年のドイツ・ハイリゲンダムG8では取り入れられた。やはり日本のG8サミットにおいても、ディーセントワークが主張どおりにG8声明の中に盛り込まれていくことを期待している。

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【イギリス】 ブレンダン・バーバー氏/イギリス労働組合会議(TUC)書記長

グローバル化の恩恵も

グローバル化の影響を考える際にはバランスを考慮する必要があると思う。グローバル経済の恩恵もある一方で負の問題もあり得る。イギリスでは、大きな恩恵も特定の分野では見られている。特に大きく成長している金融サービスなどがこれに当たる。そのかなりの要因が、グローバル化した経済による恩恵である。しかしながら、同時に大きな懸念もある。つまり、グローバル化にはマイナス面もあるということだ。

富の偏在が市場に与える影響

グローバル化による不平等が拡大しているという事例は多くの社会で見られる。イギリスでは、社会の上層部の富裕層が得る報酬が上昇を続けているという状況にある。過去5年間を振り返っただけでも、いわゆる企業のCEO(最高経営責任者)と呼ばれる人たちの報酬、イギリスの上位 100社のCEOの報酬は5年間で2倍になった。平均すると年間 320万ポンドという額になっている。金融サービス部門を見ると、かなりの額がロンドンのシティでボーナスとして支払われた。昨年、ボーナスだけでも 200億ドル相当支払われている。1,200人の人が 100万ポンド以上のボーナスを得ている。こうした非常に幸福ないわゆる超富裕層と呼ばれる人たちがいる一方で、そうでない人たちが社会には多くいるわけだ。

ここで、こうした新しい報酬体系の影響を見てみたい。イギリスの代表的なコメンテーターは、ロンドンのシティの報酬体系は信用収縮に寄与している、と言っている。また、金融サービス部門における近年の報酬体系は市場システムにおける史上最大の失敗であると言う人もいる。マーチン・ウルフというコメンテーターは『フィナンシャル・タイムズ』に、「過剰な報酬が金融サービス部門で支払われていることによって、市場システム全体が危機にさらされている」と書いた。つまり富裕層が増えたことで、市場システムに大きな懸念が生じている。

保護主義的対応は不適切

ほかにも懸念すべきことがある。例えば、雇用の国外への流出。特に製造部門においてそれは顕著だ。現在、製造部門で働く人たちは 300万人いるが、20年前は 700万人いた。低コストの労働賃金で働く人たちがほかの国で増えたことが大きな原因だ。一方、サービス部門でも雇用が喪失されつつある。先ほど、ガイ・ライダー書記長が多くの労働者が不安定感を感じていると指摘した。確かにこうした部門の多くの労働者は不安を抱いている。しかし、グローバル化する経済下こうした傾向がある中で、保護主義的な対応をしないよう気をつけなければならない。保護主義的な対応は適切ではない。この点についてトニー・ブレア前首相は、「イギリス人はこれまで、あまり積極的でないグローバル市民であった」と言っている。公的政策においては適切な対応が必要だと思う。

ただし、経済の中で大きな再編を迎えようとしているところ、つまり、不当なグローバル競争圧力にさらされている部分に対する保護は必要である。もちろんその部門の労働者に対するより強い保護も必要となる。要するに適切なバランスが必要なのだ。

社会的弱者の保護が必要

最近イギリスでは、脆弱な雇用に関する委員会が設立された。労働市場の最下層にいる最も不安定で脆弱な雇用しか得られていない人たちに対する保護を目的とする。この委員会が最近出した報告書の中でこの層に対する保護の強化をうたっている。さらにここには、移民労働者を含む労働者が雇用主によって搾取されることが許されてきたことに対する対応が盛り込まれている。これは、労働者自身に自分が持っている権利についての知識を持たせること、さらにその権利を職場で実施していくためにはどうしたら良いのかを知らせることへの対策などだ。テキストの中に労働者の権利がうたわれているだけでは、社会的弱者に対する保護は不十分なのである。

労働組合は何ができるか

労働者の処遇を向上させるために何ができるか。これが労働組合にとっての最も重要な命題である。特に不安定な雇用の労働者のために何ができるか。労働組合運動は今まで十分にやってこなかったと思う。また、効果もあまり上げてこられなかったのではないか。前述の委員会の勧告は、使用者も責任を持って労働基準を考えていかなければならないと指摘している。それもサプライチェーン全体の労働基準を考えなければならないと述べている。例えば、シティの銀行家であれば、自分のもとにいる従業員のことだけを考えるだけでは不十分だということだ。そのビルの掃除人が非常に低い賃金で働いている場合に、その銀行家が「それは清掃委託先の使用者がその清掃人を雇っているので自分の責任ではない」というのでは不十分なのだ。

労働組合でも同じことが言える。つまり、労働組合自身も自分の責任を把握しなければならない。労働組合は、その中核的な契約、つまり使用者によって直接雇用されている人たちだけを守る主体だけではなく、すべての労働者、例えば外注された仕事に従事する人たちに対しても考えていかなければならない。使用者が誰であれ、どの労働者も労働組合運動によって保護されなければならないのだ。

最後に、労働組合運動は労働者のスキル、あるいは労働者がスキルを獲得する機会を提供していかなければならないと思う。過去 10年間、この分野における労働組合活動はイギリスでは随分活発になってきた。労働組合の学習代表をつくり、使用者が従業員に対して学習機会を与えるように推進してきた。労働組合は、単に処遇が悪いときにそれを向上するだけの団体ではなく、労働者が新しい機会を追求し、そして自分の生活をより豊かにできるための支援をする団体であると見られることが重要だと思う。

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【イタリア】 アゴスティーノ・メガレ氏/イタリア労働総同盟(CGIL)経済社会研究所(IRES)所長

負の側面が拡大

イタリアにおいても、グローバル化によってさまざまな影響が出ている。グローバル化がもたらす課題に対応するため、組合では新しい政策を推進する努力をしている。グッドガバナンスと正しい政策が必要だと考える。

イタリアにおいてはグローバル化が起こる以前から、インフォーマル経済の分野において問題が存在した。現在ではその問題がさらに悪化してきている状況だ。イタリアの労働市場には現在 35%、1,700万人もの不法労働者がいる。その多くの人たちが労働者として何の権利も持たない。

そして最も深刻なのが低賃金の問題だ。賃金レベルを見ると、1992年と同レベルである。もちろんこの間に生産性は高まり、収益は上がった。しかし生産性向上の 18.6%は資本家に行き、労働者に向けられたのは2%程度に過ぎない。国の富の 50%は、国民の 10%という富裕層が独占しているのである。約 700万人の人々が1カ月に 1,000ユーロ以下で生活している。さらに女性の賃金は平均賃金よりも 16%低く、若い人の賃金は平均より 29%低いという格差も生じている。賃金が不平等であること、また労働者が正規の仕事に就けないという状況が、グローバル化の進展でさらに助長されている。

社会的対話が重要

このような課題に対応するためには、ヨーロッパレベルでソーシャルモデルを強化する必要があると考える。社会的な結束を強め、そして社会的な対話を強化していくことが重要だ。最近、3つの労働組合が団体協約のシステムを改善する内容で新しい文書をまとめた。インフレに見合うレベルまで賃金を上昇すること、同時に労働者の経営参加を促進することといった提案を、政府と使用者側に提示した。私たちはすべての労働者が、若者でも、女性でも、使用者と同じような尊厳を持って働くことができるようにしたいと考えている。すべての人に公正なグローバル化の果実の享受が必要であると考える。

CSRを推進

多国籍企業の活動を統治するルールを強化していくことが必要だと思う。これは全世界で実施されることが必要。労働者にとってCSRの概念は極めて重要だ。グローバル化のリスクというのはどこでも存在するわけで、さまざまな国において労働者がマイナスの影響を受けている。お互いに競争しなければならない状況に置かれている。全世界の労働者は競争するのではなく協力していくことが必要なのだ。来年はイタリアがG8サミットを主催する。この機会を活用して、私たちの勧告をさらに政府に対して提示していけるようにしたいと思っている。

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【ロシア】 ミハイル・シュマコフ氏/ロシア独立労働組合連盟(FNPR)会長

グローバル化の速度に適応できない労働者

ここ数年の間に世界は大きく変容した。過去においては、長い時間をかけてグローバル化が少しずつ進展したため、かつての労働者たちは段階的に適応することができた。しかし、ガイ・ライダー書記長が指摘したように、ここ 20年間のグローバル化の変化は非常に早い。そのために、労働者の適応も困難なものとなっている。資本は国外へ流出を続け、企業は労働市場を外国へ求めていく。ロシアでも国外への企業移転が進んでいる。つまり国内では職業の不安定化が進んでいるわけだ。また、賃金を引き下げる動きが大きくなってきている。新たな労働形態を導入することにより賃金を減らし、企業は利益を上げているのだ。

こうしたことで、今いろいろな分野での賃金格差が広がっている。社会的保障基盤が脆弱なため、ワーキングプアが増えている。最低賃金があまりにも低すぎることも問題。政府は、公共の仕事に関してコストを低く抑えようとしている。国内の労働市場の中での競争はより激化している。特にCSI(独立国家共同体)や中国から流入する不法な出稼ぎ労働者が絡む単純労働市場では顕著である。

さらにロシアは、構造的な失業のリスクを抱えている。それは、ロシアがWTO(世界貿易機関)へ加盟することにより大量の失業者が出るという懸念である。国内の多くの部門における競争力はまだ低い。産業刷新のための一貫したシステムがないことと、国レベルの雇用計画が存在しないことが理由である。

もう1つの懸念は、不安定雇用が増加している問題だ。例えば、派遣、請負のような就業形態が増えている。これに伴い民間の派遣会社の活動が活発になっている。多国籍企業は多くの場合、国内での労働組合活動を認めていない。例えば、ネスレ、マクドナルド、イケアなどの企業は労組を認めていない。もちろん、労組はそういう負の面と闘おうとしている。

労組はどう対応しているか

私たちは、こうしたグローバル化の負の影響に対抗するため、国レベルでの交渉を行っている。昨年私たちは、2008年から 2010年の政労使3者包括協定を結んだ。3者合意の中での一番重要な点は、まず最低賃金を2倍にするということ。2点目が給与所得者の正規社員の比率を 70%まで引き上げること。3点目がさまざまな経済分野、さまざまな地域に生じた不均衡を解消することだ。

ガイ・ライダー書記長が指摘したように資本の足はどんどん速くなっているが、労組は十分それに追いついていない。しかし私たちはこれに対応する十分な道具を持っている。連帯という道具だ。私たちは、前回の大会で合意し、2011年までの活動を示したディーセントワークプログラムを採択した。経済のグローバル化には、労組のグローバル化で対抗していかなければならない。

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【アメリカ】 ジョン・スウィーニー氏/アメリカ労働総同盟産別会議(AFL‐CIO)会長,OECD-TUAC会長

グローバル化がもたらした2つの不均衡

アメリカは現在、住宅バブル、金融危機に見舞われており、経済が低迷し、世界経済に影響を与えている。構造的な不均衡が顕在化したということであろうと思う。この現状は 30年間にわたる、いわゆるフリーマーケットという誤った政策によってもたらされたものだ。

1つ目の不均衡は、グローバル化による貿易の不均衡だ。企業のグローバル化により、国内で何百万人という製造業が失われてしまい、そのせいで労働組合の交渉力も失われてしまった。2000年以来、300万人に上る製造業の仕事が失われている。これはアメリカの企業がどんどん海外に仕事をアウトソーシングしていった結果だ。他方アメリカは、7,000億ドルに上る貿易赤字を抱えている。

2つ目は、賃金の不均衡だ。グローバル化が唯一の理由ではないが、経済学者によると、賃金格差がここ数十年間で拡大してきたわけだが、その 25%から 40%は貿易に関するものだという。

労組の対応

私たちは第一に、貿易政策に関し、労働者の利益を反映させるため闘ってきた。組合員を動員し、2国間や地域間の貿易協定とアメリカ単独の貿易政策において、労働者の権利と環境基準を守るための強制力にある措置を採り入れるよう働きかけ、成果をあげてきた。また他国政府による為替操作などの不公平な貿易慣行是正のための法制を支持してきた。

第二に、アメリカの競争力を強化するためには、投資を支援しなければならない。特に近代的なインフラの構築、イノベーションやエネルギーの効率化、教育、訓練に関する投資が必要だと主張してきた。

そして第三が労働法の改正だ。今や破綻している労働法を改正して、アメリカにおいてたくさんの労働者が組合に入れるように、そして団体交渉ができるように強く求めている。多くの労働者が組合に入りたいという意思を表明したがために首を切られており、私たちはそれについて現在の政権と戦ってきた。組織されていない労働者らは公平な機会を与えられず、自分たちの意思を表明することができない。もしこれらの人々が労働法によって権利が守られるのであれば、組合に参加すると言っているのである。彼らは組合に入りたいと言うと仕事を失う可能性があることを恐れているわけだが、私たちはこの問題に取り組むべく、一生懸命キャンペーンを展開している。この問題を本年の議会選挙、そして大統領選挙でも主張しているところであり、労働法の改正を行わないという候補者に対しては、支持しないつもりでいる。

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Ⅲ クロージングコメント「公正なグローバル化へ向けて」

ジョン・エバンス氏/経済協力開発機構労働組合諮問委員会(OECD-TUAC)事務局長

労働者が直面している問題の本質

労働組合が今直面している問題の本質とは何か。まず第1点目、これは労組声明の一部にもなっているが、労働の質の低下に関すること。これは政策の失敗と言うことができると思う。国際的な機関OECD、IMF等もレポートの中で数字を出している。それを見ると、この 15年間OECD諸国で、労働分配率が8%下落した。さらに、OECDが調査した20カ国中17カ国で不平等が拡大していると指摘されている。不平等の拡大は所得の数字に表れているだけではない。保護されていない労働、非正規労働、不安定労働の増加等は日本において特に顕著だと思う。新潟の連合セミナーでも多くの人がその説明をされた。これは人間の苦しみの源であると同時に、労働組合にとって大きな課題。非正規労働者とは、年金等社会的な保護が脆弱な人たちだ。将来的にもこの不平等な状況が残っていく可能性がある。不平等の拡大については、BBCワールドサービスが実施した35カ国を対象とした調査で、64%がグローバル化の負担が不平等であると証言している。各国の政治家は、有権者のほとんどが私たちと同じように不平等感を持っていることを念頭に置くべきであろう。それによって政策を変えていくことができると思う。

労働組合は何ができるか

現状についてだが、今日の議論で明確になったように、グローバル化の中で労働者のほとんどがそれぞれの部門においてサプライチェーンの一部となっている。そして労働者から資本家へと配分の比重が移行してきている。さらにまた、政府の規制能力も下がってきている。しかし、だからといって我々は敗者であるとか、これは不可避であると言うべきではないと思う。例えば北欧諸国についてここでは誰も言及しなかったが、北欧諸国は強力な社会保護、そして強力な労働組合、強力な経済成長を実現している。そのモデルを活用することは可能ではないか。グローバル化の中では、労働組合がうまく活動できない、保護もされないと言う前に、そういったモデルを検討してみる必要があるのではないだろうか。労働市場のマイナスの影響、教育訓練、生涯学習、それから税制、こういったものが分配の問題に対処するための重要な要素になってくると思う。

ガイ・ライダー書記長が冒頭国際的なアプローチについて言及したわけだが、私たちは同時に公的政策を通してよりよい社会規制をグローバルな市場に生かしていくことが必要だと思う。この規制はこれまで、国際的な労働組合を強化するためではなく、資本家を強化するためにあった。それを将来的にはガバナンスの考え方から変化させていくことこそが必要だと思う。

グローバル化への挑戦

グローバル化の負の側面に対抗するため、3点について指摘したい。第一に、ディーセントワーク。これは随分と努力してきたし、ある意味で成功していると思う。新潟での労働大臣への声明にも含まれている。しかしながら、基本的な労働権を認識し、そしてそれを実施していくことがベースラインになる。国際的な規制という意味では、それを推進していくことこそが重要だと思う。例えば今中国は非常に大きな投資家となっている。労働権、労働基準を守ることが非常に重要になってきている。第二に、ルールの強化。特に多国籍企業に対するルールの強化が必要だ。TUACでは、OECDの多国籍企業指針で 90のケースに言及している。多国籍企業は労働者の権利を守らなければならないということだ。第三に、国際労使関係の交渉力強化。今、60以上のグローバル枠組み協定がある。これを通して、一部、国際的な交渉がなされている。市場の力を使って年金基金をコントロールする、企業の行動の説明責任を強化していく、コーポレートガバナンスを強化していく、これらが重要になってくる。TUCバーバー書記長が、現在、欧州の法律によって派遣労働者をカバーする試みがなされていると話したが、ヨーロッパの経験をほかの地域、組織で活用できないかということも考えるべきだと思う。

団体交渉というのは私たち全員にとって主要な役割だと思っている。団体交渉は、国あるいは地域レベルだけのものではなく、グローバルなものになりつつある。連帯し、その連帯力を強化することによってグローバル化に勝利していかなければならないのである。

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