問題提起 若者支援、この15年を振り返る

現在、若年者雇用はマクロ的には良好と言われていますが、果たして若者問題は本当に解決されているのかということを、改めて考えたいというのが本日のフォーラムの狙いです。

質的な面から見ると、否定せざるを得ないというのが個人的な意見であり、同じように考えておられる方も多いのではないでしょうか──。若者は景気循環に左右されがちな存在です。現在の(売り手市場の)ような状況が未来永劫続くわけではありませんので、若者問題を考える時には長期的な視点が欠かせません。

ここで、2001年から当機構が実施している「若者のワークスタイル調査」から見えてきた質的な課題を5点指摘したいと思います。

「若者ワークスタイル調査」から見えてきたこと

第1は、若者の急激な高学歴化に伴い、若者の労働力構成が大きく変化しており、そのインパクトを私たちがまだ理解していないのではないかという点です。若者の高学歴化は、1990年代後半から急激に進んできました。1960年代に新規学卒者が中卒から高卒に代わり、若者の意識が大きく変容したことで、例えば企業も人事管理の変更を余儀なくされたということは、ご存じのとおりです。私たちは、90年代以降の若者の高学歴化のインパクトがどのように及んでいくのかということについて、まだ十分に認識していないように思います。

第2は、中退問題が挙げられます。とりわけ高校中退の問題は、教育問題だけで捉えることは難しく、複合的なリスクが当事者に降りかかっています。そして中退問題は、景気が回復してもなかなか改善しないということもよく知られています。

第3は、早期離職の問題です。現在は景気が回復して早期離職率は下がっていますが、当機構の調査によると、早期離職率は下がっているものの、早期離職の理由が変わってきていることが見えてきました。かつては「仕事が自分に合わない」などという理由で離職する割合が非常に高かったのですが、最近では、労働条件を挙げる若者が多くなっています。これは、マッチングが向上したので、労働条件による離職が相対的に増えたためかもしれませんし、労働条件が悪化しているのかもしれません。このあたりは、実はよく分かっていないというのが現状です。

第4として、そもそもの若者支援というのは、現在40代に達している就職氷河期世代のために策定されたものでしたが、当時の若者も今は中高年になっています。こうした人たちの支援は、若者問題の延長としてあり得るのか、あるいは中高年問題として改めて捉えるべきなのか──。こうした問題についても今後、議論をしていくことになると思います。

そして第5として、非正規シングル女性の問題があります。これまで非正規シングル女性の問題というのは、結婚によって解決されると考えられていた部分がありました。しかし40代にもなると親の介護が必要になるなど、彼女たちを取り巻く環境が大きく変化するなかで、経済的自立の問題が浮上してきました。この問題についても、実はまだ実態が解明されていないという状況にあります。

「若者自立・挑戦プラン」から15年

2003年に「若者自立・挑戦プラン」が策定された頃を振り返ると、試行錯誤を繰り返し、いわば暗中模索の状況で進んできたように思いますが、当時は希望と熱気にあふれていました。あれから15年が経ち、若者支援は多くの経験を積み、成熟してきたと認識しています。しかしながらその過程で置いてきてしまったものはなかったのか、そしてかつてと比べると、私たちはそれほど楽観的な見通しを持てなくなっているのではないか──。本日のフォーラムは、ここに若者支援の関係者が集い、「若者自立・挑戦プラン」からの15年間の軌跡を省みるとともに、現在の到達地点を改めて確認し、これからの進むべき方向を見つけていく──そうしたフォーラムになることを期待しています。