事例報告 ライフネット生命の働く子育て世代への取り組み

講演者
関根 和子
ライフネット生命保険株式会社コーポレート本部人事総務部オペレーションマネージャー
フォーラム名
第93回労働政策フォーラム「子育て世帯の働き方を考える─行政、企業、家庭をつなぐ─」(2017年10月3日)

当社は2008年に、74年ぶりの独立系生命保険会社として開業しました。拠点は東京に一つ、従業員150人に満たない会社です。経営理念に「正直に、わかりやすく、安くて、便利に」を掲げ、マニフェストとして「子育てを重視する会社にしていく」ことを謳っています。

テクノロジーの活用で若い世代をサポート

当社は所得の少ない若い世代にも必要な保障を届けたいと考え、保障性に特化したシンプルな商品を展開しています。また、24時間インターネットで申込や請求を可能にしたり、スマホで必要書類をアップロードできるようにしたり、LINEやフェイスブックで見積もりができるというようなサービスを積極的に展開しています。

当社の顧客の年齢層は、20代から40代までが9割を占めているので、今後もテクノロジーを活用して、働く人と子育て世代の生活をサポートしていきたいと考えています。

「ファミリーDAY」の参加で子どもにも変化が

当社の社員数はこの5年間で約70人から144人と倍増し、年齢構成はご契約者様と同じく20代から40代が9割を占めています。

当社は2016年からの3カ年で中期経営計画を立て、人事施策については「変化・挑戦・一体感」を組織目標に掲げています。

育児支援の関連では、社員の家族やパートナーなどを招き、仕事内容や社内の雰囲気を感じてもらう「ファミリーDAY」という社内イベントを毎年夏に開催しています。以前は、親の帰りが遅いと不満そうな顔をしていた子どもが、このイベントに参加した後は「○○さんの仕事を手伝うから今日は少し遅くなる」と親に言われても、「あ、○○さんってあの人だね」と少し納得するようになったという話も聞きます。このように、社員の子どもたちに親の職場や同僚などを紹介する「ファミリーDAY」は、非常に良い取り組みだと考えています。

その他に、会社が認定している部活動に「子育て部」というものがあります。メンバーは20人強で、男性が6割、女性が4割。主な活動内容はランチ会や子供服の交換会の開催、子育てをテーマとした勉強会なども開いています。男性の参加者が非常に多く、独身の男性も結構参加しています。

休暇制度のメニューは毎年見直す

休暇の取得率は、年次有給休暇が70%前後、3年に一度のリフレッシュ休暇(10日間)が80%前後と、比較的高い状況にあります。要因として上司自らも休むということが挙げられ、経営陣も「仕事ばかりでは新しい発想や知見は生まれない」と随所でコメントを出しているので、そうした文化が醸成されていると思っています。

その他に、「ライフサポート休暇」というものがあります。マニフェストで「子育てを重視する」と謳っているのに、育児社員向けの制度があまり整っていないという意見がある一方、育児中の社員からは、優遇されると逆に利用しづらいという声もありました。そこで、育児中社員に限定せず、本人や家族、パートナーを看護するための「ナイチンゲール休暇」や、不妊治療のための通院等を目的とした「エフ休暇」なども導入しました。ただし利用率が低かったり目標を達成したものは見直して廃止することもあります。人事に関わる制度は一旦作ったものを止めると不利益変更に相当するとして、廃止しづらい側面があるかと思います。ですので、最初から「毎年メニューを見直す」と宣言し、制度立ち上げのハードルを低くしています。

在宅勤務制度を導入

当社は2017年4月から在宅勤務制度を導入しています。ただし対象者は、育児・介護等の制約があり、在宅勤務によりその制約が緩和される正社員で、対象業務は、個人情報を扱わず成果がきちんと分かる業務と限定し、四半期毎に承認するといった比較的厳しい運用にしています。

利用者からは「仕事に集中できる」「妊娠中は通勤トラブルがなかった」などの声が、また上長からも「日報が送られてくるので部下の状況が具体的に把握できるようになった」など評価する声が上がっています。今後は、いかに制度の対象者や対象業務を広げていくかということが課題です。

制度より風土を

2015年以降、子が誕生した男性社員11人のうち5人が育児休業(1週間~2カ月)を取得しています。取得者からは「すごく良かった」という声が上がっています。取得第1号の社員のクチコミから利用者が増えていきましたが、いろいろな人に知ってほしいと考え、同じく男性の育休を推進している別の会社との対談形式で、男性の育児に関する情報をオンラインで発信しています。そしてそれを見た男性社員が育休を取得するといった好循環が今、続いているところです。

当社には「制度より風土」という言葉があり、子育てにかかわらずダイバーシティを大切にする風土づくりを心がけています。ですので、風土を壊さない制度を意識してつくるようにしています。

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。