図書館は、調査研究にとってのlast resort

資料センター(労働図書館)長 片桐良吉

図書館は無料貸本屋?

図書館は「無料貸本屋」という非難もあるが、 図書館は一体なんのために存在しているのか。 図書館法によれば、それは「教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設」である。それでは、労働関係の資料を主な収集対象とする労働専門図書館である当館の目的はなにか。労働に関する「調査研究に資する」ということになる。

「調査研究に資する」 図書館(「調査 図書館」と呼ばれる)となるために必要な機能は、当該館が主題とする関係資料の総合的な収集・提供と、参考調査への協力(レファレンス・サービス:利用者と資料との媒介)であり、この2つが調査 図書館に限らず、 図書館機能を測る計る2大指標である。

図書(館)の優位性

このように、調査研究のために 図書館は必須施設であるが、インターネット時代でも、以下の点は図書(館)の優位性を保証している。

(1) 図書となる情報は出版社によってまずふるいにかけられ、 図書館でも、訓練をつんだ専門家によって収集すべき資料が選別されている。

(2) 各図書館はそれぞれの基準に基づき、体系的に資料を収集し、配架している。そのため、書架をブラウジング(逍遥)しているときに、意外な発見にぶつかることがある。

(3) 資料自体の保存性にも優位性がある。図書・ 図書館とも数千年の歴史をもっている。数年前のデータも検索不可能になっているインターネットの比ではない。

(4) 持ち運び性、一覧性、可読性にも優れている。移動中でも、寝転がっても読めるし、見開きの頁も一覧できる。モニターと異なり、長時間の読書も可能である。

調査研究の起点としての 図書館調査

それでは、そもそも「研究」とは、どのような行為であるのか。手元の国語辞書によれば、「研究=物事を明らかにし真理を知る こと」である。研究とは、これまでの蓄積に対して、新しい発見を加えていく(真理を知る)ことであり、それは課題の発見、問題の解決方法の発見のための政策的行為である。真理を知るためには、これまで何が明らかにされたか、先行研究の体系的把握が前提条件とならなければならない。十分な確認なしになされた調査研究は、すでになされたものの二番煎じにすぎないおそれが濃厚であり、独り善がりの研究方法は、真理の発見とは全く逆に、社会をミスリードする危険性も大きい。

図書館は last resort

このように、先行研究のサーベイは、テーマの設定だけでなく、実施しようとしている研究方法がテーマに即した最適な方法であるのか、最もふさわしい共同研究参加者を人選しているか、等々を確認するためにも有効な方法である。そして、先行研究サーベイのための最も信頼のおける方法は、専門性をもった人材のいる、資料の収集に定評のある図書館を利用することである。インターネットも有用ではあるが、調査研究の起点であると同時に last resort (最後のよりどころ)となるのはやはり、日本においては国立国会 図書館を頂点とし、当館もその一員である図書館なのである。

先行研究のサーベイによって始まった調査研究活動が、実り豊かな成果を生み、その成果物が 図書館の蔵書となる、という好循環が形成されることを期待したい。調査研究を支援する図書館(調査 図書館)に課された責任も重い。

( 2006 年 4月 19日掲載)