「フットワークの軽さ」を持ち味に

JILPT主任調査員 郡司正人

新たな宿題

「いい調査・研究をやっているのになあ」と、何度、友人たちに言われたことか。この言葉に続くのは、「JIL(現労働政策研究・研修機構/JILPT)は見せ方が下手だ」という指摘でみんな一致していた。つまり、いくら良い調査や研究をやっても、結果を利用するユーザーの手に、相応しい形で、しかもタイムリーに届けることができなければ、その価値を社会に認めてもらうことは難しいということだ。今まで以上に、より積極的に仕事の成果を社会に問う。これが、新組織に課せられた宿題の一つとなっている。新組織の発足と同時に、調査部を新たに立ち上げたのも、そんな発想からだ。

「機動的調査」を実施

調査部の性格を端的に示すのは、新たに設けた『機動的調査』の実施だろう。研究部門の調査・研究とは別立てで、フットワークの軽い情報収集を基に、より短いスパンで社会の注目を集めている旬のテーマを取りあげ、アンケート調査を行っている。このビジネス・レーバー・アンケート(BLA)調査は、時宜にかなったテーマ設定とともに、記者発表や新創刊した月刊誌『ビジネス・レーバー・トレンド』(BLT)での特集など、迅速な結果発表を大きな特色としている。今までに、雇用スリム化の下での若年正社員の実態を追った「若年正社員の姿」調査や、自己責任論が強まりつつある教育訓練をめぐる状況を探った「教育訓練とキャリア相談」調査などを実施し、幸いなことに、さまざまなメディアで取りあげてもらうことができた。

また、BLTでは、研究成果をコンパクトに紹介しながら、それに、具体的な最新事例の取材やキーワード解説などを加え、ユーザーにとって、わかりやすく、使える情報の提供を心がけている。

顔のみえるネットワークづくりも

普段アンケート調査やヒアリングに協力していただいている企業や労組との間で、顔の見えるネットワークづくりにも取り組んでいる。企業、事業主団体、企業別労組、産業別労組を調査モニターとするビジネス・レーバー・モニター(BLM)調査では、定点観測的な調査に加えて、各種の研究会を開催し、情報・ニーズの収集と情報提供の双方向のやり取りができる関係をつくるよう努めている。将来的には、この研究会の「場」を、モニターの人事・労務担当者や労組の現場リーダー同士が、気軽に自分たちの課題について情報交換できるようなものにできれば、というのが願いだ。

「重量級ではないが、目の付けどころが良くて、動きは俊敏」を調査部の持ち味にして、それを発揮できるようにしたいと考えている。立ち上げから、やっと一回りして、どうにかそれぞれの事業の形が整いつつあるというのが実感だが、今後、さらにこの特色を前面に打ち出して、さまざまな人たちに調査結果が活用されるように、調査事業の拡充を図っていきたい。