アンケート調査を実施して思うこと

副統括研究員 鈴木 一光

昨年、初めて企業向けアンケート調査を実施する経験をした。これまでは、様々な機関で実施した調査の結果を活用して報告書を書いたり、他の機関に調査を実施し報告書としてまとめていただくようお願いした経験はあった。調査には、政府の公式調査をはじめ様々なものがあふれており、調査というものは比較的簡単にできるものだと考えていた。

アンケート調査を実施してみて、考えさせられることが多くあった。

調査を実施すると、調査内容に関する質問を含め必ずある程度の問い合わせがあるとは聞いていたが、実際に多数の問い合わせがあり、その半数は、「経営が厳しい中、なんでこんな時に一方的に送りつけるのか。何の役に立つのか。」、「この前、似たような調査に協力したぞ。またか。」、「今、他の機関から調査依頼が3通も来ている。どうなっているんだ。」などであった。調査票の回収状況では、返送していただいた調査票の中に他の機関や当機構が同時期に実施している調査票が混ざっていたり、逆に、他の機関宛に当方の調査票が混ざって返送されたりすることもあった。こんな状況では、企業の担当者の方々がいらいらされ、一言言いたくなるのももっともな話である。

一方で、企業の担当者の方々から温かいお電話もいただいた。「お宅の調査のテーマは、今、会社の人事・労務関係でも話題になっていて、悩みを抱えている。専門家だろうから、相談に乗ってくれないか。」や「法令・制度の改正や施策の充実に役に立つということなら、忙しいが快く協力するよ。」などといったものだった。

政府の調査をはじめ様々な機関で実施する調査の回収率が年々下がっていると聞くが、経済環境が厳しい中、調査の内容・時期の重複などもあり、企業の担当者など調査にご協力いただく方々の負担も重く、このようなことになるのもしごく当たり前の話である。このままの状況でますます調査の回収率が下がり、誰も調査には協力をしなくなってしまうと、世の中の客観的な事実や実態が把握できず、社会のニーズを踏まえた法令・制度の改正や施策の充実などが的確に行えなくなるのではないかと心配となる。

まずは、調査にご協力いただく方々の負担を出来るだけ軽くし、分かりやすく簡便な調査票を設計するとともに、他の機関での調査の状況や過去の調査の活用を積極的に検討することなどが、改めて必要ではないかと思う。

しかし、いくら軽減しても調査にご協力いただく方々の負担は生じる。こうした方々に積極的にご協力いただくためには、何のための調査なのか、何の役に立つ調査なのかしっかり考えて調査は実施しないといけないのではないかと思う。法令・制度の改正や施策の充実などにでも貢献できることがわかるなど、今一度、当たり前のことだが、調査の目的をしっかりさせて調査を実施するように心がけないといけないと思う。

(2013年2月22日掲載)