年功賃金抑制と雇用延長

研究所副所長 浜田浩児

年功賃金抑制ということか、中高年の給与が引き下げられ、私も減額を被っているところである。

息子から年齢間賃金格差を批判される身としては文句も言えず、格差縮小自体には異存はない(賃金カーブが全くフラットになるのはどうかと思うが)。しかし、今の中高年は、若い時に大きな年齢間賃金格差を被ってきたわけであるから、格差縮小をするなら自分の若い時に遡って行い、埋合せをしてほしいという思いはある。

もちろん、そんなことは現実的ではないが、それに代わる方法として、雇用延長がある。賃金カーブが緩やかになり中高年の賃金が下がっても、より高年齢まで長く働くことによって補える1)

これについては、改正高年齢者雇用安定法による段階的な雇用確保措置(雇用確保措置義務年齢は、2006年度62歳、2007~2009年度63歳、2010~2012年度64歳、2013年度以降65歳である)を受けて企業の継続雇用が進んできている。この動きを促進し、すべての企業において確実に65歳までの高年齢者雇用確保措置が講じられるようにするとともに、希望者全員が65歳まで働ける企業の拡大に努めることが必要である。将来的には、定年引上げによる雇用延長が望まれる。また、60歳以降の賃金は、60歳前との大幅な調整や、同僚との間で過度に差をつけるべきでなく、高齢者の就業の実態や生活等を考慮する必要がある。

さらに、2013年度から厚生年金等の報酬比例部分の支給開始年齢引上げが始まり、60代前半は段階的に年金が全く支給されなくなるが、これに対しても雇用延長は有用である。高年齢者雇用確保措置がより普及して就業率が高まることで、65歳年金支給開始となった場合に収入不足となる高齢者を減らす効果があり、さらに、高年齢者雇用確保措置の中でも定年の引上げまたは廃止がより普及していけばより効果的である2)

経済全体にとっても、少子高齢化により労働力人口が大幅に減少することになれば、制約・マイナス要因となる可能性が大きいため、以上のような雇用延長をはじめ、高齢者がその意欲と能力を発揮し、就業率が高まるような環境整備が重要である。

1) この点は、清家篤(1998)『生涯現役社会の条件』(中央公論社)等で指摘されている。

2) 高年齢者の雇用確保については、労働政策研究・研修機構(2011)『高齢者の就業実態に関する研究』労働政策研究報告書No.137で詳しく分析されている。

(2011年6月8日掲載)