産業分類の変更について

 調査・解析部長 久古谷敏行

いきなり堅苦しい定義から始めると・・・

「日本標準産業分類は、統計調査の結果を産業別に表示する場合の統計基準として、事業所において社会的な分業として行われる財及びサービスの生産又は提供に係るすべての経済活動を分類するものであり、統計の正確性と客観性を保持し、統計の相互比較性と利用の向上を図ることを目的として、昭和24年10月に設定されたものである」

ということになりますが、産業分類は、統計調査の結果を読み解くために無くてはならない分類の一つです。

その産業分類が全面的に見直され、平成19年11月に第12回改定として、情報通信の高度化、経済活動のサービス化の進展、事業経営の多様化に伴う産業構造の変化に適合するように変更されました。

主な変更内容には、例えば次のようなものがあります。

  • 「サービス業(他に分類されないもの)」を分割し、新たに「学術研究,専門・技術サービス業」、「生活関連サービス業,娯楽業」の大分類を創設
  • 「物品賃貸業」(リース業)を「サービス業(他に分類されないもの)」から分離し、「不動産業」と統合【「不動産業」→「不動産業,物品賃貸業」】
  • 「郵便業」を「情報通信業」から分離し、「運輸業」と統合【「運輸業」→「運輸業,郵便業」】
  • 主な中分類の下に,小分類「管理,補助的経済活動を行う事業所」を設定
  • 「林業」と「農業」を統合【「農業,林業」】
  • 「製造業」の中分類を再編・整理
  • 客の注文を受け、調理した飲食料品を提供するテイクアウトやデリバリーサービスを「卸売・小売業」から分離し、「持ち帰り・配達飲食サービス業」として「飲食店、宿泊業」と統合【「飲食店、宿泊業」→「宿泊業、飲食サービス業」】

本コラムでは、この最後の項目について紹介してみたいと思います。

例として、パンを売っている店を考えてみます。

(1) その店で作っていても、他所から仕入れていても、店の中に食べる場所があり、みんながそこで食べていれば「飲食店」です。(これは前と同じです)

(2) 店の中に食べる場所が無く、パンを買った人が皆、持ち帰っている場合、これまでは「小売り」でした。(作ったものを売っている「製造小売り」は「小売り」とする、というルールもありました。現在も原則はそうです。) しかし新産業分類では、作り置きしている場合は、他所から仕入れて店に置いている場合も含めて「小売り」となり、客の求めに応じてパンにハムを挟む、バターを塗るなどの何らかの加工をしている場合は「持ち帰り・配達飲食サービス業」となります。

余談ですが、ひとくちにパンを売ると言っても色々な形態がありますし、最近では「お取り寄せ」も人気ですね。新産業分類では、店を持たない「無店舗の製造小売り(インターネット販売など)」は「製造」となる、という新たなルールもできました。

このような「宿泊業、飲食サービス業」が設けられたのは、テイクアウト・デリバリーサービス等の比率が高くなったこととともに、「産業に関する国際的な分類との比較可能性の向上を図るため」ということも一つの要因のようです。

新産業分類の「宿泊業、飲食サービス業」は、北米の産業分類(NAICS:North American Industry Classification System)の「Sector 72--Accommodation and Food Services」に相当するのですが、この分類では飲食サービス業は「722 Food Services and Drinking Places」です。

また横道に逸れますが、

「722 Food Services and Drinking Places」はさらに

「7221 Full-Service Restaurants」

「7222 Limited-Service Eating Places」

「7223 Special Food Services」

「7224 Drinking Places (Alcoholic Beverages)」

に分かれています。

格式の高そうな「Full-Service Restaurants」とお手軽そうな「Limited-Service Eating Places」、どこが違うのかというと、料金が「後払い」か「先払い」かなのです!(正確には注参照

ということで、一見同じに見える外食チェーンでも、料金の払い方が違うと北米産業分類では格付けに差が出てしまいます(券売機で買えばもちろん先払い、「Limited-Service Eating Places」ですね。でも後払いなら「Full-Service Restaurants」!)。

閑話休題

このように現代の状況が反映されて利便性が増した新産業分類は、労働力調査では21年1月分から、毎月勤労統計調査では22年1月分から、賃金構造基本統計調査では21年分から適用されています。

当機構で提供している労働統計データベースでも、労働力調査、毎月勤労統計調査の新産業分類への対応を完了しましたので、どうぞご利用ください。

(注)(下線:筆者)

Full-Service Restaurants:providing food services to patrons who order and are served while seated (i.e., waiter/waitress service) and pay after eating

Limited-Service Eating Places:(1) providing food services where patrons generally order or select items and pay before eating or (2) selling a specialty snack or nonalcoholic beverage for consumption on or near the premises

(2010年5月14日掲載)