最近の学生さん2

研究員 大谷 剛

以前に、「最近の学生さん」という題でコラムを執筆したが、今回も同様の話題を提供したいと思う。なお、以下で述べることは私の個人的な感想の類なのであって、厳密な分析の上に成り立っている議論などといったものではまったくないことを、予めご承知おきいただきたい。

私はつい最近まで、東京のある大学で非常勤講師を勤めさせていただいていた。受講生の全ては二回生であり、男女比は半々といった具合であった。第一回目の講義にあたり、私は準備のために開始時刻前に教室にいた。開始時刻が近づくにつれて学生さんが続々と入ってきたのだが、驚くべきことに(?)、前方の席から埋まっていくではないか。

このことを、同年代(概ね30~40歳)の複数の友人に話したところ、「信じられない」、「なぜそんなに真面目なのか」といった意見ばかりが返ってきた。中には、「自分が学生だった頃は、一番後ろの席でクルマの雑誌ばかり読んでいた」という者さえいた。

さて、上記の現象であるが、講義の回を重ねるに連れて徐々に消えていった・・ということはまったくない。くわえて、出席率の推移を観察してみても低下することはなく、平均して80%~90%であったと思われる。我々の時代であれば(というと、いい過ぎかもしれないが)、第一回目の講義での出席率が90%程度、最終講義での出席率がほぼ100%、その間はせいぜい30~40%といったところではなかっただろうか。初回講義の出席率が高いのは、先生の「タイプ」を見極めるためであり、最終講義での出席率が高いのは、テストに関する情報を収集するためであった。要するに、効率的に単位を取得することを目的として、出席行動が決定されていたといえる。簡単にいうと、不真面目だが要領はいいということか。

翻って、最近の学生さんは、上に示したように大変真面目ではあるが、やや要領がよくないようにも思われる。それを示唆するエピソードを、最後に紹介しよう。テスト前のある講義で、「テストの際には、参考資料の持ち込みを認めます。持ち込み可です」と話したところ、「ほんとに?!」、「やった~!」という驚きと喜びの混じった声が聞かれたのである。だが、「持ち込み可」であることは事前にシラバスに記載しておいた。そこで、「シラバスは事前に読んでいたのか?」と確認すると多くの学生さんが頷いた。

以上のことから推察できるのは、彼らは、シラバスに書かれた講義内容を確認した上で私の講義を選択したのではあるが、単位取得の難易度については確認していなかった、あるいは気にとめていなかったということである。内容を重視して講義の選択を行ったという真面目さは大いに評価されるべきだとは思うが、要領よく単位を取るといった視点もあってよかったように思われる。

良きにつけ悪しきにつけ真面目である。

(2010年 3月 5日掲載)