高齢者雇用の日本モデルと多様な形での雇用延長

JILPT統括研究員 岩田 克彦

エイジフリーと「高齢者雇用の日本モデル」

急速な高齢化の中で、エイジフリー社会(年齢にかかわりなく能力を発揮して働ける社会)の実現が議論されている。生涯を通じ、自己の能力を多様な形で最大限に発揮したい各個人、競争力の維持のため能力管理を強めたい各企業、急速な高齢化の中で、幅広く支え手を確保しなくてはならない社会全体、それぞれの要請に即応する方向であろう。

しかし、日本の企業では雇用管理における年齢基準がとりわけ強く、能力・職務重視の賃金・人事処遇制度が確立していない。年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた取組みは、時間をかけ、段階的かつ着実に行わざるをえない。

日本として当面めざすべきは、「雇用保障と年齢障壁是正とのバランスが取れ、高齢者と若年の長所がかみ合い、かつ、多様な漸進的引退制度の選択肢がある中での平均的引退年齢が高い社会」であろう。そして、この目標実現の努力が、他国にとっても十分モデルとなろう。

高年齢者雇用安定法の改正

さて、現国会で公的年金制度の改正法案とともに高年齢者雇用安定法の改正案が審議されている。上記日本モデル実現にあたり、大変大きなステップである。内容は、 (1) 企業に対し、65歳までの定年の引上げないし継続雇用制度の導入を求める、 (2) 労使協定で継続雇用制度の対象労働者基準を定めたときは、希望者全員を対象としない制度も可能とするほか、当面の間(2006年4月の施行日より、大企業3年間、中小企業5年間)は、労使協定でなく就業規則等に基準を定めることも可能とする、などである。

すなわち、「当面の間」(大企業では2009年、中小企業では2011年まで)を過ぎると、労使協定で選別基準の合意がない場合は希望者全員の雇用延長となる。しかし、60歳以降の雇用延長を一律に行うことは困難で、多様な形での雇用延長をいかに実現するかが重要課題となっている。

多様な形での雇用延長とは?

多様な形にもいろいろある。契約形態として、常用フルタイムの他、各種のパート、有期雇用(嘱託・契約社員)、派遣社員、出向、個人請負などがあり、仕事内容も雇用延長前とどのように変わるか様々である。若年者との関係としても、全くのエイジフリー、管理者、若年管理者の補佐、顧問、訓練指導者、若年者とのペア就労、時短・有給取得のためのリリーフ要員などが考えられる。「高齢者と若年の長所がかみ合う」ことがとりわけ大事であろう。

高齢者個人には、意欲的な人生設計を、企業や現場の管理者には、高齢者を受け入れる職場風土の醸成を特に期待したい。