若者の現状と必要な対応

JILPT副統括研究員 小杉 礼子

今、職業社会に出ようとする若者が直面している問題とそれを解く鍵を考える。

現状1<若いほど、学歴が低いほど仕事に就けない、とりわけ安定的な雇用は難しい>

若者の失業率もフリーター等の非正社員になる比率も急激に高まっている。大卒より高卒のほうが失業率・フリーター率は高く、中途退学の場合はとりわけ高い。進学し、卒業することは、卒業後の職業生活の安定に寄与している。

現状2<上司や先輩とコミュニケーションがとれない、挨拶すらできない>

新規学卒者の採用は厳選採用が続いている。不況に加えて、雇用慣行が変化し生え抜き人材への需要が低下しているからだが、新卒者への厳しい評価もその一因である。若いこと、経験がないことがマイナスになる。よく指摘されるのが、職場で必要なコミュニケーションの方法を身に付けていないこと。課題を何とかしようと取り組む意欲の低下も嘆かれている。ただし、職場のほうに若者を育てる余裕がなくなったことも大きい。上司も先輩も自分の仕事で手一杯という職場が増えている。

現状3<やりたいことを仕事にしたい、でもやりたいことがわからない>

若者の側はといえば、仕事選びで自分のやりたいことへのこだわりが強くなっている。仕事に自己実現を求めるのは、豊かな社会に育てば当然。しかし、やりたいことを考えるといってもそもそも職業社会を知らない。だから、「いろいろな仕事を知るためにフリーター」という進路選択に多くの若者が共感する。

現状4<責任のある仕事にはまだ就きたくない、自由で気軽な働き方が今はいい>

フリーター選択は自由で気楽な道の選択でもある。都市には必要な時だけ働ける環境もあり、長期・安定の価値が低い若年期には、それも合理的な選択に見える。が、現実のマイナスは大きい。

解く鍵のひとつは学校教育の対応。学習につなぎとめ、学ぶ意欲を喚起する工夫をが必要だ。知識の重要性が増す高度情報化社会を迎え普通教育は重要である。しかし、学ぶ意欲を喚起するには、<やりたいこと>への連動が必要。職業社会との接点が欠かせない。

もうひとつは産業界の対応。経験のない、訓練されていない、意欲を見せない若者たちを育てる責任は産業界にもある。学校への協力はエンプロイアビリティを育てるには当然必要だ。そこでは厳しい評価を突きつけることも大事だが、同時に、夢やロマンを語り継ぐことも重要。若者・子供たちが、刹那ではない将来の自分を肯定的に描けるかどうかは大人の生き方にかかっている。

そして行政。学校と産業界をつなぐプログラムを展開する必要がある。